湖のふち

GM [2014/01/02 14:39]
 
近辺の町村はいくつかある。
一番大きいのはミードの街で、ここから北に4時間程度の距離だ。
他に"村"といえば、このまま南下していけば半日くらいのところに小さな集落が、他はだいぶ間隔を開けてここから1日の場所に。それぞれはやはりミード湖沿いにあった。
それ以南の町村はエストン山脈近くに存在することになり、ここからだと2日かかる。


 


マークが女性に何をしていて指輪を落としたか訊くと、女性は辺りを見回すようなしぐさをしたあと、ひとつの木を手で示した。その手にはミトン型の手袋が嵌めてある。


「あの木、あの木の根本に鳥が落ちていたんだあ。
 見てみると・・・死んでたん。
 あたい、拾って――――べ、別の場所に埋めてやったのさあ」


木の根元には羽がいくつか散らばっており、確かに鳥の痕跡があったことは近づいてみてわかるだろう。


「今日と同じ手袋をしていたんだけどさあ、鳥を拾う時に手袋を外したんだあ。
 そんで、さあ手袋をしなおそうってとき指輪がないことに気がついたん」


女性はしゃべっている間、手袋の嵌った両手を見せて説明していた。


>「それと。あんまり通りすがりの人にその手の頼み事はしない方がいいと思うなぁ。
> ちょっと悪い奴だったらネコババしてやろうって思いかねないよ。
> あれか。俺らから溢れる善人オーラでも感じちゃったかい?」


>「ブッ! ブハハ!!」


「へええ、そうなのかい・・・?
 ふんふん・・・。わかったよぉ」


マークの忠告は素直に聞いているようだった。
女性はヴェンがなぜ笑っているかわからないようだ。


>「...とは言え、2人の言い分は尤も。危急の事態はお察ししますが、
> こんな村外れまでご婦人が1人で来るのは余り感心はしませんな。
> 冬には飢え故に山賊に身をやつす輩も多いと聞きます」


「ああ、このあたりは  ・・・いやあ、なんでもないさあ。ありがとうね」


何かを言いかけたが、すぐに手をひらひらと振り話を終えた。


>「それにワシ個人としては、
> 一緒に探す事についてはやぶさかではありませんぞ。
> ...なあにお礼は今晩の暖かい食事と一晩の宿で如何でしょうか」


「なんてこったい!あぁありがたいよお。はなからそのつもりだったさあ・・・!
 今のあたいの家は広いから、何人でも泊められるんだよ」


>「で、この数日でどの辺まで探した?
> まー一応、軽ーく見てみるから。」


「・・・あ、あの木の根元と、その周辺だあ。道の上からそこまでも、何回も。
 でもずっと見つからなくてさあ。
 あたい、今日はもっと広く見てみようって思ってるんだあ。
 夜の間に風でコロコロ転がって、どこかの影に引っかかってるかもしれないでさあ」


女性はそういい、湖の向かって右側の湖畔沿いへ歩き出そうとしたところ。


>「おい! ババア」


ヴェンの言葉に振り返る。


>「ここで魚でも喰らって、もう少し話を聞かせろや。」


「おやあ。馳走になっていいってかい? 採れたて、うまそうだなあ」


>「こっちも魚が上手く焼けなくて困ってたところだ。
> 料理はできるだろ。」


>「不躾で申し訳ない、ご婦人。
> 実はさっき釣った魚を焼くのに見事に失敗しましての...
> 代わりに焼いて頂く事は出来ませぬか?」


「料理・・・かい。
 昔、火事にあってから火というのが苦手になってしまってねえ。
 自分で作るのはもっぱらスープだけだあ。それでもめったにないよ。
 
 ありゃあ、これは真っ黒焦げだなあ。あっははっ。
 あたいもきっとうまくできん、すまんなあ」


詳しい話というのも、女性は口ごもる。
先ほどの話を繰り返すようにしながらも、鳥の羽の色は灰色だったなど、その程度の付け加えだけだった。


「あたいは、トーコ。
 あんた、ガラフ。退魔師かあ・・・うん、そりゃ立派だ! 今までに何を退治したことあるんだい?」


話を嬉しそうに聞く。
そしてしばらくしてから、女性は歩き出した。


マークの使い魔の蛙――――イドは主人に起こされ、まなこを開ける。
イドの目から見て女性は、少し行ってはしゃがみ、すぐ立ち上がる。そしてまた少し行ってしゃがんでは立ち、を繰り返して湖畔沿いを反時計回りに進んでいった。


指輪を探しても見当たらない。
キラリと光るのはどれも氷の反射か、雪の結晶だった。


マークは、女性の証言から指輪の事を考える。
しかしどう考えても"普通の指輪"、ただのファッションリング以上には考えられない。
ガラフは指輪のことを考えていたはずなのに、いつしかプレッツェルの結び目について考えていたかもしれない。


 


それから時間がたった。時としては一刻。


「もし! ここ! 見ておくれよー!」


トーコが遠くから声を上げた。湖の土手、枯れた木々の間に彼女はいる。


「穴があるーん! 人の足跡も、あるーん!!」


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湖畔は、街道側から離れていくほどすぐに林が広がった。
今は葉を落としているが、湖につきそうなくらい大きく枝を曲げた木もある。


穴が開いている、とトーコが呼んだ辺りは人の足跡がいくつかあった。
詳しく知るには調査が必要だろう。


穴とやらは直径で1m強あった。
垂直に開いているものではなく、急な勾配がついている。


「あたいの指輪、絶対この中だあ。
 だってこんなに探してもないんだよ!
 誰かいるんだ!
 とっちめておくれよ!」


トーコはやや興奮するような口調に変わっていた。
何かきっかけがあれば穴にすぐ入ってしまうような調子だが、身体を三人の方へ向けて意見を伺っている。


穴は暗くなく、下は雪のせいか青色だった。
勾配は湖の方へ向かっていた。

 

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GMより:


指輪はちらと探した感じでは見つかりませんでした。
その代わり、女性が穴を見つけました。

さて、どうしましょうか!
どうするかね!


足跡については、調べたい方はレンジャー知力をどうぞ。
質問もあればどぞどぞ。