手紙の旅

サブGM [2012/06/27 03:21]

エグランチエは、手紙に魔法を掛けた。


はじめは、ペンの魔法を。

そして今度は、古代の魔法を。



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エグランチエに魔法をかけられた瓶の船に乗って、手紙は何度目かの旅に出た。

ハザード川の支流とは言え、スタート地点である上流の流れは激しい。
荒波に揉まれ、川魚につつかれ、時には瓶ごと川の底のほうに叩きつけられそうになる。
手紙にできることは、ただひとつ、ただその流れに身を任せることだけだ。


だが、瓶の船に乗った手紙は、勇敢に旅を続ける。
ルイネの元へ向かって。


冒険家は、同じ失敗を繰り返さない。
そう、この固く締められた船の蓋は、エグランチエがしっかりと、何度も何度も、確認したし、
ほんの短い距離だけど、オランの海を泳いでテスト走行だってしたのだから!


ざぶん、ざぶん、ざぶん。


岩に引っかかったりしながら、数日。
マイペースな瓶の船の旅は、ようやく目的地へと到着した。


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――もしかして、あの手紙はもう帰って来ないのかな。


手紙の金貨を小さな手で握りながら、ルイネは考える。
メリンダにはおかねを触っちゃダメだって言われてる。
硬いものは、ルイネの手も硬くしちゃうから、ダメなんだって。

だけど、いいんだ。
だって、これは手紙がルイネにくれた、お土産なんだ。

ルイネの手は、きっと、あの黒い石像みたいに硬くなる。
だから、その前に、ルイネは大事なお土産を握りしめてしまうんだ。
そうしたら、ルイネと金貨は、ずうっと一緒なんだ。
だから、いいんだ。


「・・・にしゅうかん・・・」


あれから、日にちがすぎるたびに、ルイネは羊皮紙に1つずつ印をつけた。
手紙を冒険させるまでは、灰色の時間を数えてるみたいで、ルイネは日にちを数えたことはなかった。

来る日も、来る日も。
窓の下、川の流れを覗きこむ――だけど、ルイネのもとに、手紙が帰ってこない。

最初はすっごくどきどきしたんだ。
だけど、もう、どきどきするのもルイネは疲れてきたよ。

でも、ルイネは眠れないんだ。
ルイネが目をつぶったら、その瞬間、手紙が戻ってくるかもしれないんだよ。


ああ、ルイネがさっき寝てる間に、手紙が帰ってきてたんだったら、どうしよう――。

ルイネは――。


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だが、目的地に到着した手紙は、拾われた。


ルイネが仕掛けた、窓の下の川に浮かぶ堰で、過ごす事しばらく。
洗濯のためにやってきた婦人に、拾われた。


手紙は婦人のエプロンのポケットに入れられ、しばらくそのまま揺られた。
だが、婦人が洗濯かごを床に落としたかと思うと、慌ただしく、移動した。


急いで、ルイネの家から、近所の家に。
すぐルイネの家に戻ってきて、今度はそのまま、近くの修道院に急いで移動した。
修道院は、慌ただしい様子だ。
それから、難しい顔をした男がやってきた。

しばらく、長い間、そのままだった。

それから、ポケットの中の手紙はまたルイネの家に戻ってきた。
婦人が椅子にどさり、と腰を下ろし、その勢いで手紙の船は床に転がった。


ごろん、ごろん、ごろん。


それから、婦人に拾い上げられ、ベッドに寝かされたルイネの枕元に、そっと置かれて。
手紙の少し長い旅は、ようやくそこで終わった。
あとは、ルイネが目を覚ますのを待つだけだ。


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手紙にできることは、ただひとつ、ただその流れに身を任せることだけだ。

エグランチエの探知の魔法は、そんな手紙の旅を魔法の力で追いかけている。



――満月の夜は、もうすぐだ。





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サブGM(ここあ)より:
大変お待たせいたしました!
エグランチエのロケーション結果をお届けに参りました(''*


ロケーションの魔法は、見知った品物の居場所を知るための魔法です。
なので、エグランチエは好きなタイミングで、ロケーションを使い、手紙の行方を追いかけることができます。
完全版によれば「近づくほど存在感がある」「大まかな距離を知ることができる」ということなので、
ルイネの家(タリカに教えられた村?)に近づいていれば、より細かな方角や位置、
例えば近くのマーファ修道院に寄ってるな! という事がわかったりすることでしょう(''*
その辺の時系列は鳥さんのお好みで、自由にどうぞ!
(手紙が家に辿り着く前に止めちゃって別のストーリーにしても構いません!)


一応、水浸しになったりしたので、ルイネ→オランまでの時間がかなり掛かっている、
ということで、ルイネが手紙を出してから今回の手紙が届くまでに二週間掛かったとしてみます。

はい、石皮病は二週間で進行判定を行います。(完全版p179)
悪化したのかもしれませんし、悪化しそうになったけれど取り留めたのかも。
そのあたりも、鳥さんにお任せしちゃいます!(''*