特定困難きゅうり

GM [2012/06/17 03:09]
「アリス。ほら、またお残しなんかして」

ファリス神殿で賄われた、イシュタルの昼食の皿を見て、
同僚の女性神官が顔をしかめる。

皿にはイシュタルが苦手とする、塩っぱくて酸味の強いきゅうりのピクルスが残っている。

「嫌いなだけで、食べられないわけじゃないでしょう」

同僚はそれだけ言い、自分の皿を下げにこの場を去った。
これ以上言っても埒があかないと思ったのだろう。

イシュタルの白い皿にポツンと、深緑色が転がる。

他人からあれこれ言われるのは、イシュタルの見た目が幼いせいでもある。
外野からの余計なお世話は、彼女にとって宿命といっていいだろう。

「あの・・・。あんた・・・
 "アリス"さん ですか?」

食堂の長テーブルの隅に座っているイシュタルに声をかける人物は、まだ10にも満たない少年だった。
神殿に仕える風ではなく、一般礼拝の保護者と一緒にやってきたということが想像できる。

知らない人に声をかけるというのに緊張しているのか、ぶっきらぼうな態度だ。

「これ、そこに落ちてたんで」

抑揚ないセリフで、四角にたたんだ羊皮紙を突き出す。
そこ、とは恐らく食堂の入り口付近だろう。

イシュタルが受け取ると、少年はさっさと踵を返した。


たたまれた羊皮紙の表面には、

  アリス様へ

とだけ、たどたどしく書かれている。

アリスという名は、この神殿内にどれだけいるかわからない。
それだけ一般的で、特定するのは難しい。

だからイシュタルは、羊皮紙を開いた。


///////////////////////////////////////////////////////

アリス様へ

ようま を退治してくれて、ありがとう。

新しい家ぞくから、今、字を習っています。

ど力すること、忘れません。

いっぱいど力して、のこった友だちのケリーと、バルと、また、村にもどって、
元どおりみたいに、前みたいに、くらそうって話ししてます。

でもね、ケリーとこのまえ けんかしちゃった。

アリス様は、友だちと仲なおりするとき、どうやってしてますか?

ケリーがね、悪いんだよ。
きゅうりを食べないで、のこすんだもん!
きゅうりはきらいだっ、て、すてるの!もったいない。

私は、だから、
ケリーがきゅうりをキライなら、あたしもケリーがキライ!
っていっちゃったの。

それから、なんだか ギクシャクしているんだ。

アリス様は、こういう時、どうしますか?

おしえてください。

                    ニコルより

///////////////////////////////////////////////////////


その裏面には、住所が記されていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
GMより:
イシュタルの場合はこちら!

嫌いな食べ物で「味の濃いもの」とありましたので、きゅうりのピクルスとしましたが
大丈夫でしたでしょうか・・・!><

手紙の差出人は、
妖魔に村を襲われて孤児になり、別の村に引き取られていった女の子
です。多分、ファリス神官のアリスさんが妖魔撲殺してニコルたちを救ったんでしょうね。

この手紙、持ち帰ってもいいですし、神殿の誰かに渡してもいいですよ!

しばらくはこちらのカテゴリ「特定困難きゅうり」を使用してくださいませ。
イシュタル [2012/06/17 14:54]

「嫌いなだけで、食べられないわけじゃないでしょう」

言うだけ言って自身の皿を提げに行く同僚神官を一瞥しながら、私は自分の皿の上に残された"敵"を見つめた
私にとってはこの皿に残されたヤツは魔物にも等しい、何故我等が神はこのような悪魔の食物をお作りあそばせたのか...

「...食べられない訳じゃないわよ、でも食べなくたって死ぬ訳じゃないんだし...」

フォークで皿の上のピクルスを転がしながらブツブツと文句を言う、なんとかしてこの悪魔を処分できないものか...
残したまま皿を片付ければ煩く言われるし...かと言って食べるなんて苦行はしたくないし

大体キュウリならキュウリでそのまま出せばいいじゃない、酢漬けにする意味がわからないわ
これはもう私に対する嫌がらせとしか...等と考えていると

「あの・・・。あんた・・・
 "アリス"さん ですか?」

と声をかけられ、私は声の主へと振り返る、そこには少年の姿、多分...少年だろう
年がいってても私のような例外があるから外見で人を判断できないけれど

「確かに私はアリスと呼ばれているけれど...何か?」

「これ、そこに落ちてたんで」

愛想のない子ねぇ...とは口に出さずに少年が差し出した手紙を受け取る、手紙を受け取るとサッサと少年は踵を返してしまう
愛想と言うか礼儀と言うか、捕まえて色々と説いてやろうかしらとも思ったけれど...疲れるので止めにしよう
それにアレを皿に残したまま席を離れようものなら逃げたと思われるのは請け合いだ

とりあえず緑色の悪魔の事はちょっと頭の中から消し去っておいて、私は四角に折りたたまれた羊皮紙を開いた
手紙を送ってくるような相手には身に覚えがないけれどね

手紙の内容は私と同じファリス神官でアリスという名前の女性が妖魔を退治、村を救った事から始まったが
もうこの段階で私ではないと確信できる、一人で村を救うような度胸も実力もないし、そもそもそんな事をした覚えもない
第一私の名前はアリシエラだ、アリスは愛称であり私は人に自分の名を名乗るとき、相手が子供とは言え愛称を名乗る事はない
と言う事は"アリス"という名前を持った誰か別の人間なのだろう、私はこの段階で読むのを止めようかとも思ったが
盗み見ているわけではないし、とりあえず私に渡されたものなのだから、と読む事にした

「仲直りする方法...か、難しいわね」

全ての文を読み終えて私はそう呟いた、話の内容的にはきゅうりが嫌いなケリーという男の子がいて
手紙の差し出し主であるニコルという女の子が、きゅうりが嫌いなケリーは嫌いだと喧嘩したという大まかな内容だ
一般論から言えばケリーがきゅうりを食べれば丸く収まる、が子供に嫌いなものを食べろと言っても反発するだけだし
ニコルが折れて食べないなら食べなくてもいい、と言うのは元の木阿弥...これが年頃の男女ならば色恋を絡めて食べさせれば済むけど...

「............ふむ」

これは私宛の手紙ではない、だから私がこの手紙に答えを返す必要はない、が...
宛先が私ではないにせよ、この神殿に他に"アリス"と名乗る神官がいただろうか?私も全員の名前を知っているわけではない
仮定の話としてこの神殿の中にアリスが私以外にいなかったら、この手紙はどうなるのか?
返事も出されないままニコルという少女は何時までたっても返事を待ち続けるのだろうか?
少女は"アリス"という神官ならば返事をくれる、そう信じて手紙を出しているに違いない...違うアリスであるとは言え見過ごしていいのか
私は暫くの間悩み、結論を出した

「...とりあえず、他の神官に渡しましょう、私以外にもアリスと名乗る人がいるかもしれない」

「いたらいたでその人に返事を書いてもらえばいいし、もしいないのならば...私が書けばいい、騙す事になるかも...しれないけれど」

手紙をもう一度四つ折にし、私は席を立ち、食堂を後に...しようと思ったが

「そういえば...これどうしようかしら...」

机に置かれた皿の上に残された私の天敵はすでに時間がたって干からびたような感じになっている
食べずに戻すか...いや、そういえば手紙の喧嘩の理由もきゅうりだった...まぁ、私は酢漬けが嫌なだけできゅうりが嫌いな訳ではないけど
食べずにこの子の気持ちが理解できるのか、そう考えた私は...残されたきゅうりを全部口に放り込み、数回咀嚼して...水で流し込んだ

「う...気持ち悪い...こんなの食べなくて嫌われるのならどうぞご勝手にって言う気がするわ...手紙の主には悪いけど...」

今が夜ならお酒で口直しするのに...とか考えつつ、皿を片付ける為その場を後にした
手紙は...とりあえず見かけた適当な神官に渡せばいい、それで私以外のアリスが見つかればいい、そう考えながら...

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PLより

酢漬けのきゅうり...PCどころかPLも嫌いですよ(何
天敵、悪魔の食べ物、緑色の悪魔などと散々な呼び方でピクルスを嫌っています
文中でも触れているとおりイシュタルはきゅうりとピクルスは既に別の食い物として認識しています
酢漬けが嫌いなのであってきゅうりが嫌いなわけではない、と(笑

手紙に関してはとりあえず同じ神殿にアリスという別の女性がいないかと他の神官に手紙を渡して確認します
少なくとも妖魔を撲殺できるほどウチのアリスは強くないので(笑
もしいなければ私もアリスだし、返事すっかーみたいな感じで返事を書きます

おかしなところ、ここは修正して、と言うようなところがあったらご指摘お願いします
リレーセッション自体初めてなので、正直自信があんまりなかったり...(汗

GM [2012/06/19 20:49]
イシュタルは、顔見知りの神官に声をかけていく。
時に、手にした手紙を見せる。

「アリス・・・?知り合いにいるけど、彼女は武器を持たないからなあ。
 この手紙の相手じゃないよ」

首を横に振りながら手紙を返され、過ぎ去られる。


イシュタル一人では、このオランのファリス神殿にどれくらい顔が利くかは知れていた。
オランはラーダが主教だとはいっても、十万人都市の至高神、規模の小さい訳がない。

声をかけられる顔見知りも減っていき、最早行き当たりばったりになりかける。

この小さな神官が誰にでも声をかけられるかといえば、違う。


誰に聞けば、この手紙を本来の相手に届けられるだろう。
そもそも届けられるのだろうか?



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GMより:
どなたも「妖魔退治に赴いたアリス」を知らなかった!
ということでお願いします。

恐らく本物のアリスは冒険者として格上、接点がないので知れないということで!

短い進みで失礼しますっ
タリカ [2012/06/21 13:08]

「アリスちゃん、『アリス』は見つかったのかい?」

通路の影から現れたのは、いつもアリスをからかって遊んでいる同僚のアウラダだ。
涼し気な水色の瞳はいつも遊び道具を探している。
それはだいたいアリスになるわけだが。
黙っていれば整った顔立ちで女の子の間にも人気が出そうなものだが。
実際人懐っこい性格でそこそこ人気はあるらしい。

中腰になってアリスに目線をあわせて話しかけてくる。

「聞いたよ。『アリス』を探しているんだって。
 これだけ人が出入りしている神殿だから、探すのも大変だよなぁ。
 小さいのにエライエライ」

頭を撫でてからかっているようだ。
コロコロとよく笑う。


「ま、がんばりな。
 見つかったらきゅうりの酢漬けを身長の分だけ奢ってやるよ」

ハハハ、と笑いながらバシッとアリスの背中を叩くアウラダ。
いつもお尻を叩くつもりなのだが、背丈の都合でいつも届かないのだ。

「おっと、失敗。
 アリスはちっちゃいからな」

悪びれた様子もなく、アウラダは手をひらひらと振って去っていく。


「そう言えば」

一度通路の角から消えた後、また顔だけニョキッと出てきた。

「えらく高位の神官の中に似たような名前のひとがいるらしい。
 まあ僕達がおいそれと逢えるような立場の人ではないだろうけど。
 高位ともなれば仕事や行事で居ないことの方が多いだろうしな」

まあ、がんばってな。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 がるふぉ:

  GMに影響なさそうな範囲でNPCを出してみました(^^
  対応しにくかったらスルーしてくださーいf(^^;

イシュタル [2012/06/21 19:18]

「ふぅ...まぁ、楽に見つかるとは思ってもいなかったけれど...こうも見つからないのでは、ね」

近くにあった椅子に腰掛けて私は溜息を吐いた、私がここまで必死になる必要はないのかもしれない
これは私のではない...と放置するのが普通の考えなのだろう、それが最も手っ取り早い、自分が気に病む事がなければ...だけど

「さて、当たれそうな人は大体当たったし...もうこれは私が代筆するしかないのかしら...」

内容はどれだけ高尚な言い方を用いたところで普通のお悩み相談でしかない、代筆する事くらいはいくらでもできる
私に文才があるかないかは問題だが、本当の"アリス"が見つからない以上、そうする事も考えなくてはならない
私がそう考え、とりあえずもう少し探してみよう、そう思い椅子から立ち上がると丁度行こうとした方向の通路の陰から誰かが現れた

「アリスちゃん、『アリス』は見つかったのかい?」

「げ...アウラダ」

陰から現れたのは同僚の神官アウラダだった、正直言って彼は苦手だ、いつも私を子供扱いするからだ
私は本物の"アリス"を探すために同僚に聞いて回っていたが、彼にだけは聞こうと思わなかった
どうせ「ちっちゃいのに偉いねー」とか言って私の頭を撫で回すに違いないのだ、髪形を直すのも楽じゃないと言うのに

「聞いたよ。『アリス』を探しているんだって。
 これだけ人が出入りしている神殿だから、探すのも大変だよなぁ。
 小さいのにエライエライ」

「人の頭を撫で回さないでくれるかしら...あと中腰もやめなさい、余計に腹が立ってくるわ...」

私の抗議も何処吹く風、笑いながら頭をグシャグシャにしていくアウラダ、流石にイラッときて手を振り払う
これで多少は私が嫌がっているのだと、理解してくれれば...していればこんな扱いは続かないわよね...ハァ...

「ま、がんばりな。
 見つかったらきゅうりの酢漬けを身長の分だけ奢ってやるよ」

「あら、ありがと...そうなったらあなたの口に全部ア~ンをして詰め込んであげるわよ♪
 二度と人を小馬鹿にするような口が聞けないようにね?」

真面目な反論をしてもアウラダには通じない、だからこそ皮肉たっぷりに返事をしてみたが...
相変わらず笑ったままアウラダは私の背中を叩いて立ち去ろうとした

「...っ、いったいわね、何するのよ」

「おっと、失敗。
 アリスはちっちゃいからな」

「失敗?アナタ何処を叩こうと.........」

私が何かを言う前に立ち去っていくアウラダを見送りつつ、アウラダの身長、正確には手の位置から逆算して叩ける部位を考える
頭、ではない...肩でもない、背中を叩いて失敗と言う事は.........あのエロ神官.........っ!

「あんな不埒な輩がファリス神官とは何かの間違いじゃないの...ファラリスよ、そうに違いないわ...」

私が踵を返し肩を怒らせながら立ち去ろうとした瞬間

「そう言えば」

と、消え去った通路の先から顔だけを出して、アウラダが何かを語りかけてきた

「えらく高位の神官の中に似たような名前のひとがいるらしい。
 まあ僕達がおいそれと逢えるような立場の人ではないだろうけど。
 高位ともなれば仕事や行事で居ないことの方が多いだろうしな」

言うだけ言ってアウラダはまた通路の奥に消えた(首より上だけだが)

「高司祭...か、確かに簡単に会える人じゃないわね、手紙の宛先と言う確証はないけれど...そのような人物がいることくらいは調べれる
 ま、仮に手紙の宛先だったとしても返事を書いている余裕があるのか、という問題は出てくるでしょうけどね」

私はそう考えながら、最後の最後に助言だけ残して消えたアウラダの消えた先を見ながら

「礼は言わないわよ、セクハラで訴えられないだけ神に感謝するのね...」

とだけ呟いて、今のところ唯一の手がかりである高神官にいると思われる"アリス"の存在を確認すべく、私は動き出した

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PLより

ちょっと親族に不幸がありまして、19日午後~21日午前までセッションを確認する事が出来ませんでした
事前報告がなかった事をお詫び申し上げます

プレイヤーの方針としてはアウラダの助言?により手がかりとして出てきた高司祭にいると思われる似た名前の人物を調べます
出来れば最近討伐に行っていたか、などの詳細もわかれば嬉しいですが...高司祭の行動ともなると機密になるかもしれませんねw
該当する人物はいるが、会うことは出来ない、手紙を渡す事も出来ない(神殿内にいない)というなら
返事を書く事にします、だらだらと引っ張っている感がありますが、よろしくお願いしますw

>タリカさん
NPCの提供どうもです、有難く使わせていただきました
毒づくよりも「アウラダって実は私にほれてる?」とか自惚れたイシュタルの展開も面白いかなと考えましたが
実は口が悪い、というのが一応の設定ですのでこのような展開にしましたがいかがでしょうか(笑

 

GM [2012/06/26 01:24]

「もう、どうしろっていうのよ...」

たらい回し。
こういう現象は大なり小なり、そこかしこに存在する。

今日もファリス神殿でイシュタルは、あの羊皮紙を握る。
様々な人に握られ、またイシュタルも何度も目を通し、皺だらけで柔らなくなった紙。

もうこの孤独な戦いにも疲れてきてしまった。



神殿の、中庭を囲むように面するこの長い廊下は、人が憩いに使う場所でもあった。
廊下の石材と同じ、白く滑らかに削られたベンチが所々にポツンと置かれ、
広い神殿を歩き疲れた時に座ることもできたし、同時にこの庭を楽しむこともできた。

昨日、雨が降った。

だから今朝のこの中庭は濡れていて、緑の匂いでむせ返るようだった。
朝の早いとも言えるこの時間、廊下に人は少ない。
イシュタルは冷えた石のベンチに腰を下ろす。

そして手にある紙を開く。

何度見ただろう。
もう見飽きたかもしれない。
この字、この文。

「ファリス様」

イシュタルは己が仕える神の名をつぶやく。

―――どうすれば、いいですか。

その時、背中から声がした。

「カミが疲れてるねえ」

この声。振り向けば、涼し気な水色の瞳。

「まーだ悩んでるの」

「アウラダ」

中庭に立つこの男は一体何をやっていたのか。

「アリスの髪が疲れてる」

ベンチの上に乗った髪を、アウラダが掬う。

「はい。これは俺が貰うね」

そう言ってイシュタルの肩越しから、アウラダは手紙をひょいと取り上げた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
GMより:

手紙ぽいしました。
これは乙女ゲールートで・・・!!!

きっとイシュタルのために人知れず本物の「アリス」を探してくれるんです。アウラダは。


イシュタル [2012/06/28 08:35]

突然背後から現れたアウラダに手紙をとられ、私は手紙を持っていた手を何気なく見つめ、そして思った

確かにアウラダの言うように明らかに私宛ではない、と判っている手紙にこんなに悩むのはおかしいのかもしれない
彼から得ていた情報を元にして、ファリス神殿にいる私以外のアリスに送るように誰かに言伝を頼めば良いだけの話だ
何故私はこんなにこの手紙にこだわるのだろう?こだわる意味も理由も私には何もないと言うのに...
あるのは妖魔により家族を失いながらも懸命に生き拙い書き方ながら必死に手紙を出したニコルへの神に仕える者としての同情心程度だ
それともきゅうりが嫌いでニコルに嫌われてしまったケリーに自分の未来を投影しているとでも言うのだろうか
私も偏食を続けていれば、いずれ同僚から見向きもされなくなるのではないか、と

(そこまで重く考える必要はないと思うけれど...ありえなくない未来だけに想像できる自分が嫌になるわね)

自分の考えに苦笑を漏らして、私は手を見つめるの止めアウラダに視線を向ける

「アナタがその手紙をどうする心算なのかは知らないし、知る心算もないけれど...私は"一応"手紙の返事を書いておくわ
 本物のアリスが見つかるとは限らないし、アナタがそもそも探すのかという問題もある...けれど」

そこまで言い、一息ついてから私は言葉を続けた

「アナタは軽薄で女性にだらしがなくて、飄々としていて私からしてみれば信頼性のかけらもないし、スケベでどうしようもない人だけど
 困っている人を見捨てるほど薄情な人間じゃない事くらいは判っている、だから...出来れば本物を見つけてあげてね」

「もしどうしても本物が見つからない、本物はいたが返事を出さないような人なら私が責任を取って返事を出すわ
 その子は、ファリス神官のアリスに助けを求めているのだから...ね」

私はよっと腰掛けていたベンチから立ち上がると、天を仰ぐ
雨が降ったあとの空は空気が澄み、願えば空の彼方までいけるのではないかとも思えるような青空だった

「...我が神ファリス様、願わくば...彼の悩める子等に寛大なるご慈悲とお導きを与えられん事を...」

澄み渡る青空に向け、私は神への祈りを捧げる
あの手紙が本物のアリスの下へたどり着けるように、そしてあの子等の仲違いが修復されるように...と

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PL
どうやって書けば良いかな...とかなり悩んだ挙句、こんな短い文になってしまいました
アウラダに手紙をとられたとは言えイシュタルが何も行動を起こさないと言うのは変ですしね...
って言うか、アウラダをボロクソにいってるけど良いんだろうかw

あいも変わらず修正する箇所などあったらご指摘お願いしますね

GM [2012/07/01 12:45]
アウラダは、おや、という顔をする。

「へえ。出すの」

そして、ニヤリ。

「僕にも君からの手紙が欲しいな」

飄々と。



――――どうしてあの男が至高神の声など聞けるんだろう。

人々はたまにそう口にし、語らい、いつもひとつの結論で終わる。

『彼もまた必要な正義』

それは、彼を肯定することで間接的に自分らをも肯定するからだった。

しかし誰が彼のことを本当に考え、知っているだろうか。
彼は自分のことを殆ど言わない。
だから周りが彼について何を考えても、それは憶測の範疇を出ない。

ある意味では、アウラダは皮肉に神秘的であった。
悪意を込めてそう言う者も存在する。

それが、この、アイーシャ。



「あんっのスケベ男!!!」

神殿の離れ、厠。
がぁん、と便器を蹴り上げる、若い女性の神官。

「あいたたたた・・・。
 おーイタ・・・」

細い女の足では、焼き物の塊は硬すぎた。
アイーシャは痛む爪先を浮かし、じっと耐える。

「・・・余計に腹が立ってきたわ・・・」

いけないいけない、と心のなかで呟き、足首をぶらつかせたまま笑顔を作る。

「怒っては闇に支配されてしまうわ。 笑顔・笑顔♪
・・・なんて、やってられませんよファリス様ぁ」

ふにゃりと口がへの字に曲がる。

「大体、意味がわからないのよ、あの男。
――――今日から君の名前はアリスだ、なんて。
 私はアイーシャっていうのよ、16年間この名前だったわ。
 そしてこれからも絶対にそれは変わらないわッ」

厠の個室の中で、まるで相手がそこにいるかのように、アイーシャは一人で喋った。

「ほんっと、意味の分からない男!!」

・・・・・・。

――もしかして、嫌がらせ?

アイーシャは考える。

――私があの男の誘いを直前に断ってしまったのを、まだ根に持っているのかしら。
そんなまさか。嫌な記憶をいつまでも覚えているような人間じゃないはずよ。
自分の気分が下がることを、あの男は何よりも嫌がるんだから。
いつだって自分が大事。
まわりの女なんか、自分の気分を良くさせるために利用しているだけにすぎないのよ。
本当にイヤな人間よね。ああ、ダメ、考えちゃダメ。また腹が立ってくるわ――

「ふぅ」

息をつく。

――それで、ええと、何だったかしら。

「あ、そうだわ・・・」

私、アイツに言ってなかったんだっけ。
だって言えないじゃない。お仕事の話は、いくら同僚とはいえ漏らせないものなのよ。

前日、急に、妖魔退治に出かけることになって、
アウラダに勉強を教える約束を直前で反故にしてしまったの――

アイーシャはそれが半月前のことだと思い出す。

――私、まだちゃんと謝っていなかったわね――

もう、爪先に痛みはなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
GMより:

アイーシャが手紙の"アリス"
>ニコルが聞き間違えたかなんかした?
 ↓
アウラダは何の気なしにアイーシャへ冗談で
「(なんか名前が似ているなあ)きみは今日からアリスね」
 ↓
実はドンピシャ
 ↓
でも手紙のことはアイーシャは知らず、
アウラダはアイーシャが手紙の正しい宛先などとは思っていない(知らない)

っていう、すれ違いの瞬間です。
さあ!どうしましょうか!


このすれ違ったままイシュタルはニコルに返信をしてきゅうり談話に花が咲いて、
それが後々アウラダとアイーシャに知られて「この子・・・!きゅうりッ」ってなってもいいですし、すれ違いを正して本来の主に手紙を渡してもいいです。
しかしその場合、どういう風にPC、NPC、を動かしてすれ違いを修正する流れに持っていくかは、クーデルさんにお任せです!



イシュタル [2012/07/06 11:28]

「手紙が欲しければいくらでも書いてあげるわよ、ただしアナタが手紙の宛先を探し出せれば、ね
 返事を書いているのはあくまでも保険よ、返事が来なければ手紙の主も悲しむでしょうし...」

アウラダの飄々とした物言いに少々苛立ちを覚えながらも私はアウラダにそう言い
ふと、考えた事をアウラダに伝えてみた

「アウラダ、例えばの話だけれど手紙の主が妖魔討伐をした神官の名前を聞き間違えている、と言う可能性はないかしらね?
 何分子供の耳だし、老人ほど聞き間違えが酷くはないでしょうけど...名乗った側の発音次第では聞き間違えもあると思うのよ」

「例えば...エリス、エリシャ、アリエス、アリーシャ...似た名前なら幾らでもでてくるわ、"アリス"というのが愛称でも本名でもなく
 単純な子供の聞き間違えだとしたら...宛先がアリスと言う事自体前提として崩れる事になる...そんな人物は存在しないのだから」

私の言葉にアウラダは正直半信半疑のような表情だ、恐らくは私が無理矢理にも話を完結させようとしているように見えているのだろう
しかしながら考え方としては間違ってはいないはず、アリスと言う人物がこの神殿には存在しない事(ただし愛称は除く)
妖魔討伐などの任務は機密扱いなものの、出向できる人間など限られており時期的にいなかった人物を当たるのはそう難しくないだろう

「アウラダ、もう一度アナタの知り合い、それも似たような名前に当たってみてくれないかしら
 妖魔討伐が云々かんぬんは機密でしょうから教えてくれないでしょうけど、ニコルって言う子供の名前に聞き覚えはないか、と
 少なくともニコルが"アリス"と認識している女性は、ニコルと一度は話しているのだから聞き覚えがあるはずなのよね」

「機密に関する事を聞いても教えてはくれないだろうけど、一人の子供の名前まで厳重に情報統制されているわけではないし
 少しでも反応を見せたら手紙を見せるなり、搦め手で攻めるなりやって頂戴よ、そういうの得意でしょう?」

そこまで言って私は口元にニヤリと笑みを浮かべ

「まさか、やりたくない...とは言わないわよね?アナタは困っている女を見捨てるほど薄情じゃないものねぇ?」

とやや挑発的にアウラダに言葉を投げかけてみた

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PL
ダメだ、文章力の限界が...っ!他者を描写するのがこれほどまでに難しいとは...
もうイシュタルの独白みたいな文章にしかならない...GM様申し訳ないです、書くのに時間かかった挙句こんな出来で...

タリカ [2012/07/12 16:30]

「なるほど、聞き間違いねぇ。
 それに子供の名前から探すのはいいアイデアだ。
 アリスちゃんにしては上出来だね。
 小さいのにエライエライ」

 手紙の文面にある『ニコル』という文字を見ながら、アリスの髪を撫でる。
 撫でる?
 いいや、いい子いい子してるんだ。

 だって、こうするとアリスは僕の事を気にしてくれる。
 どういう意味だとしても、それはとても嬉しいことだから。

 君は気がついていないんだろうね。
 君の何気ない一つ一つの動作が僕の視線を、心を、惹きつけているということを。


「しかし、搦め手ねぇ。
 君の目には僕はいったいどういう風に映っているのかな」

「まあいいや。
 気が向いたらあたっとく。
 『困っている女』ならともかく、それが子供じゃあんまり気がのらないからな。
 な、ちっちゃなアリスちゃん」


 さあてどうしようかね。

 羊皮紙をひらひらさせながら僕は思いを巡らせるのであった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 がるふぉ:

  アウラダ視点で進行に問題がない程度に割り込んでみました。

  クーデルさん、独白でもいいと思いますよー!
  わたしも独白めいて書いていますから(^^;
  楽しんで行きましょう^^
  アウラダはイシュタルに気があるけど、
  気が付かれないように逆についからかってしまう小学生男子のような感じにしてます(笑)

  タイトルは「つかえるならばアウラダでも~」を文字ってつかえるもの=アウラダ=『イシュタルに仕える者』としてみました。
GM [2012/07/15 12:48]
イシュタルがアウラダにそう言った後日、イシュタルはやや少し後悔することになる。

なぜなら、あちらこちらで「ちょっときいてスフィ!アウラダが!」と声をかけられることになったからだ。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
GMより:

くっ 自重するぜ


>クーデルさん

おそくなってごめんなさいー!
独白で全然構いません。むしろやりにくくさせてしまっていましたら申し訳ないッッ。
何とか本流に持っていこうと頑張るより、イシュタルがイシュタルらしく勝手に振る舞っているところを描写してもらえれば激しく萌えます。

日常のノリで!
イシュタルルートはラノベ調です(きりり

パン食べに行こうぜ!
イシュタル [2012/07/16 08:36]

「しかし、搦め手ねぇ。
 君の目には僕はいったいどういう風に映っているのかな」

『...決まっているじゃない、女たらしの不真面目エロ神官よ』などとは口が裂けても言わないでおこう
アウラダにとて傷つく心くらいは持ち合わせているだろう、それに少なくとも私に協力してくれている
それを無碍にするほど私は薄情じゃあない、もっともなじられた方が嬉しいと言う特異な人間もいるらしいが...
アウラダがそれに該当しない事を切に願うしかない、とアウラダに撫でられて乱れた髪をセットし直しながら私は心の中で続けた

「まあいいや。
 気が向いたらあたっとく。
 『困っている女』ならともかく、それが子供じゃあんまり気がのらないからな。
 な、ちっちゃなアリスちゃん」

「"ちいさい"は余計よ、本来ならば私を小さいと言う人間は許さない所だけれど、あなたのそれに侮蔑は含まれて居ないでしょうからね
 今回ばかりは勘弁してあげる、でもあまり言わないでもらえるとありがたいわね...ああ、あと協力に関しては素直に礼を言っておくわ」

アウラダに対し素直に礼を述べると、彼は少々戸惑ったようだった、私が怒らないのが意外なのか、礼を言うのが意外なのか...
まさか本当になじられるのが好きなのでは...という危険な予想は置いておいて...私は呆ける彼を残し、その場をあとにする
しかし...このときの依頼が後に私にとって後悔を招く事になるとは、その時には私には予想できなかった...

-しばらくの時間が過ぎる-

アウラダに調査を頼んでしばらく、なぜかそこらで苦情のような言葉が私に殺到した
いや、正確には私への苦情ではない、アウラダがなにがしかをした...というものであったが
元を糺せば私がアウラダへの調査依頼が遠因だろう、なぜなら苦情の殆どがアウラダによって強引に"アリス"にされかけたと言うモノ
苦情を言ってくる神官達の名前は"アリス"とは程遠い者ばかり、何処をどう聞き間違えてもアリスとは間違わないだろう者もいた

「出来れば名前が似通っていて、ニコルという名前に聞き覚えがある女性を対象に聞け、と言ったはずなのだけれどね...」

一人の女性の苦情を聞き終えて、去っていくその後姿を眺めながら私は呟いた
考えてみればアウラダに女性の調査をさせるほうが間違っていた、あの男には女性の知り合いはそれこそ星の数(誇張)ほどいる
恐らくはニコルという名前に聞き覚えがある女性全てに私の言う搦め手、とやらを実施したのだろう
ニコルなどという名前はオランを探せば何人いるかわかったもんじゃない、当然その知り合いならごまんと居るはずだ

「......ふぅ、アウラダも必死に?調査してくれてるんだから弊害は少しくらいは出ると思ってはいたけれど...やりすぎね」

決して横のつながりが強いとはいえない神殿内という閉鎖空間において、積極的に協力してくれるアウラダの行動は嬉しくないわけはない
しかしそれが弊害しか生まぬと言うのであれば話は別だ、元はといえばアウラダの女性関係?に依存した依頼をした私が悪いのだが...

「なにはともあれ、彼を止めるのが先決か...私が依頼しておいて私が止める、これがどれほどの矛盾か...
 私は焦っていたのだろうか...ニコルへ返事を出す人を早く見つけなくてはならない、と...それとも...」

自分でめぐらせた考えにヤレヤレと頭を振って鬱屈した気分を一掃する、とりあえずはアウラダを見つけよう
彼を止めるなり、彼の行動に少しの修正を加えるなり、そんな事は彼を見つけてから考えれば済む事だ
もしかしたら...本当のアリスを見つけている可能性もあるかもしれないのだし、ね

そう考えながら私は神殿内を怒られない範囲で駆けてアウラダの姿を探し始めた、廊下は走ると怒られるからね...

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PL
終わりが見えない...っ!?これはやばい展開か...!自分で引っ張っておいて何言ってんだという感じですが

>タリカさん
イシュタル×アウラダのラブコメ希望...!?ってそんな訳ないですよね、ははは...コメディではあってもラブはなさそうだしorz
使える者=仕える者というアナグラム(って言うのかな?)は面白いですね
元ネタはもちろん立っているものは親でも使え、という言葉なのですが、イシュタルからすれば仕える者というより
頼めば引き受けてくれる人のいい男、でも性格は...という感じの見方です

>GM様
書きにくくしているのは私の思考能力です(ドヤァ
イシュタルがイシュタルらしく...むぅ...「ええいメンドクセェ!私が書けばいいんだろ書けば!」と酒を飲みつつ返事を書くイシュタル...
なんか違うなぁ...その辺りは次回以降の宿題と言う事で(ぇ

以下雑記
>パン食べに行こうぜ!
近所のパン屋で土曜の丑に因んでうなぎパンというモノが売りに出されました、勿論本物のうなぎが入っているわけではなく
うなぎの形をしたひょろ長いパンな訳ですが...結構いけました、うなぎの形をしているだけに長くてちょっと量が多いので
複数個を食べるのは無理っぽいですが、面白い試みだと思いましたね

 

毎度の事ながらタイトルに意味はありません(キリッ

GM [2012/07/20 00:45]
「こらーーーーーーーーー!!!!」


ファリス神殿ではない場所で、ファリス神官が叫んでいた。

「あたしの持ち物に"アリス"って書いたの、あなたでしょーーー!!」

自慢のたわわな黒髪を揺らし、ジネブラが拳を振り上げて走る。

「あーあ・・・・・・」

彼女のお気に入りだった帆布の肩掛けカバンの、製作者の名が刺繍されたタグには、靴墨で小さく『アリス』と書かれていた。

「・・・・・・とれない」

擦ったせいで真っ黒に汚れが広がったタグをつまんだ後、ジネブラは目の前のオランの街道をゆく遠い男の背中へ、視線を飛ばした。


---------------------------------------------------------


またある時は、試験の答案用紙だった。


アウグスタは図書室で、返ってきた答案用紙の不正解箇所を調べていた。
自分の立場が多少変わるこの試験には合格したが、彼女は不正解の正しい解を知ろうとしていた。

調べ物に手間取り、思っていたより時間がかかった。
午後三時近く、アウグスタは水を飲みに行こうと、場所はそのままに図書室のその席を立った。
その際に一人の男とぶつかりそうになり、一言述べて見上げた顔は、アウグスタが苦手とする人物だった。

給水所から戻ったとき、彼女の答案用紙にはアウグスタの文字が消され、アリスと書かれていた。

(どういう・・・ことです、の?)

アウグスタは、苦手としていたあの人物のことが、ますます苦手になった。


---------------------------------------------------------


最早、見境ない。


"うなぎパンあります"
とのぼりを立てたパン屋の雇われ売り子。

「ジムー、ヒマだねー」

粉袋を食い破るネズミ退治の担当として飼われている黒猫に、
売り子のキムが声をかける。

ジムがミャアと返事した頃、濃青の麻ローブを羽織った男が来店した。

「いらっしゃい。今は豆のパンが焼きたてだよ!」

ローブの若い男は、ニヤリと笑う。

「じゃあそれを3つ、もらおうかな。
 ・・・君が今日から"アリス"って名乗り始めるなら、ね」

黒猫のジムが、にゃあと鳴いた。


GM [2012/07/21 22:12]
「じゃあそれを3つ、もらおうかな。
 ・・・君が今日から"アリス"って名乗り始めるなら、ね」


アタシは・・・知ってる。かな?
この人はうちのお店で、パンを買っていかない。

この、年の近い、いかにもモテそうな顔と立ち振舞のこのオトコのひとはいつも
うちのお店が片手間で作ってるお菓子を買ってく。


「うーん?」


アタシはこのオトコのひと、アウラダに、不服の声を上げた。


「アリスー? なに?それ」


どいうこと?

世間話の延長で訊いただけなんだけど、
意外にも、アウラダは動きのある雰囲気に変わって、笑った。

笑ったっていっても、いつもの、何考えてるかわからない笑みだけど。

何でもいいから、ほら、豆のパンが冷めちゃうよ。
早く食べてもらわないと、どんどん硬くなっちゃうよっ。

「おもしろいね。んじゃアタシ、今日からアリスって名乗ることにする」

そう言ってアタシは、アウラダに手を差し出した。

「豆パン3つで3ガメルになります♪」


GM [2012/07/22 02:05]
あんっ!もう!

鞄の汚れが広がらないように注意して、昼間のオランの街をあるいた。
今日はおつとめがせっかく早く終わって浮かれていたのに、今は気分が最低だ。

「うう・・・許せなーい!」

これは大問題だわ?!
明日、侍祭へ報告しないといけないことよ。

仮にもファリスの神官がやっていいことを超えてる。
アウラダ、今度こそあなた、"聞こえなくなる"わ―――。
そうなってほしくないもの。

わたしは、手でファリス神への祈りの動作をきった。

今日はもう、甘いお菓子と夕食用のパンでも買って、気を紛らわそう。



「こんにちは~」

お店の装飾がかわいいから、このパン店が好きで、よく通ってる。
店番をしているのは、いつものキムと、猫のジム。

ジムはわたしを見ると、顔を洗い始めた。

「あらやだ、ジムったらお洒落してる」

そういって、いらっしゃいませとキムがいう。
飾らない自然体な態度で接してくれるこの可愛い店員さんとのおしゃべりも、
今は多くなっていた。

「キム、今日はオススメある?」

わたしがそう言うと、キムは「うん」と言った後に、何か思い出したような顔をした。

「そうだ。アタシのこと、今日からアリスって呼んで!」

「へ?」

唐突にそう言われたんだけど、今のわたしには・・・なんっか思い当たる!

「なあに?それ。もっと詳しく聞かせて」

わたしは真剣な声音で、キムにそう言うのだった。
GM [2012/07/22 17:48]
「うん、うん・・・」

アイーシャは、最近自分の下についたばかりの侍祭の話を聞いていた。

今朝、通い神官のジネブラから聞いたという話。
それは、アイーシャへ相談する侍祭の身にも起こったことであった。
とあるファリス神官があちこちで不可解な言動を、多数の人間に繰り返しているというもの。

「――――それで、私からはどういたしましょう・・・?」

懺悔にも使われる、ごく小さな相談室。
格子が嵌められた窓は木戸が降ろされ、明かりが入っている。
その明かりは、アイーシャの目の前の侍祭――アウグスタの前髪を照らした。

アウグスタは、今自分が相談した件について、報告だけでこの問題が済むとは思えず、自らの取る態度をアイーシャに仰ぐ。

「そう、ね・・・」

アイーシャは手で額を押さえ、悩んだ。

――ったくどういうことになってるのよおおお!?
あのバカは!一体、何をしたいわけ?――

うーん、と唸ったあと、アイーシャはアウグスタへの回答をまとめた。

「そうね。
 多分、アウグスタが周りから聞いたような考えには、この先きっとならないわ。
 そこは安心してもいいわよ」

そう言われるも、アウグスタからは不安の表情が取れない。

「うーんとね、あのバk・・・あの神官は、」

言い直しても、やはり、避けては通れない。

「あの神官は、バカなのよ」

「・・・はぁ」

ぽかんとした返答は、想定内だ。

「かの神官自体に悪意はありません。
 むしろ彼自身、いいことだと思ってやっている、確信犯ね。
 だから、動機として神の意思には反していないの」

でも・・・と喉まで出かけているアウグスタに対し、アイーシャは言葉を続けた。

「うん、動機はともあれ、行い自体は最低よね。こればかりは私も、ひどく頷くわ」

アイーシャは思った。
アウラダは、メビウスの輪だ。
捻れているから裏表がなく、捻れているのにおかしくない。
正義か悪か、裏か表か、白か黒かで考えがちなこの神殿内を、時に混乱させる。

「私から、アウラダに直接問いただします。
 そして祈りを行なってもらいます。
 その時もし、奇跡が起こらないならば、起こらないなりに処分します。
 変わらずに神の奇跡が使えるならば」

アイーシャが信じるものは、ファリスの判断だけだ。

「アウラダは問題解決において方法を間違っているので、
 私達が協力し、彼の抱えている問題を正しく解決しましょう」

そうして、小さな部屋の中で向かい合っている二人の神官に、笑みが浮かんだ。
タリカ [2012/07/23 14:53]

 吾輩は猫であるにゃ。
 なんて本があると誰かが言ってたにゃ。


「じゃあそれを3つ、もらおうかな。
 ・・・君が今日から"アリス"って名乗り始めるなら、ね」

「にゃぁ」

 にゃんでこのお兄さんは、あたしがお母さんに『アリス』って名前を付けられたってことを知っているのかにゃ。
 キムには『ジム』って呼ばれているけれど。
 『ジム』って名前はキムが付けてくれたのにゃ。

「うーん?」

 キム?
 お腹すいたにゃ。
 そんなお兄さんなんてどうでもいいから、お魚ちょうだい。
 どうせ買わないんにゃから。

「アリスー? なに?それ」

 ねー、きむ-。

「おもしろいね。んじゃアタシ、今日からアリスって名乗ることにする」

 キムも『アリス』?
 良くわからないけどこれでお揃いにゃ。

「豆パン3つで3ガメルになります♪」

 あ、珍しく買った。

 ねー、ごはんちょうだーいにゃ。
 あ、きゅうりは苦手だからヤメてにゃ。

「にゃぁ」

 ねー、きむー。
 ごはんー。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 がるふぉ:

 出来心ですす、すみませーん(^_^;)
 クーデルさん、思うように動いていいのよ...。
 クーデルさんが動きたいようにイシュタルを動かしてくれれば、
 GMや他の方が拾ってくれますからっ。
 もしくはニコルに手紙を書いてもいいと思いますし。
 頑張って>_<

イシュタル [2012/07/24 08:22]

刻が経つにつれて大きくなっていくアウラダによる被害、持ち物に名前を書かれる、名前を強要されるなど
子供の悪戯レベルの被害しかでていないのがせめてもの幸いかもしれないが、ことそれの発端が私の言葉だとすれば
責任を感じずには居られない、私があの時アウラダを利用しようと考えなければ、ここまで騒ぎが大きくはならなかったかもしれない
私は手紙の主ニコルへの返事を出させるために私とは違うアリスを探し出そうとしていた、そしてそのためにアウラダを利用した
私は何処で道を間違ってしまったんだろう?アリスなど初めから探さねば良かったのか?それとも私が偽りの返事を出せばよかったのか?
それとも...アウラダの本質を見抜けなかったのがそもそもの原因なのか?いずれにせよ私が道を違えたのは確かである

(...神よ、私はどうすればよかったのでしょうか...?私が本物の"アリス"を見つけようとした行為は偽善だったのでしょうか?)

教会内の礼拝施設にて私は神に対して祈る、勿論こんな独白的な愚痴とも取れる言葉に返事が返ってくる事はない
私は...ニコルのために、というお題目を使って騒ぎを起こしただけではないのか...?
アウラダが何故ここまで騒動を大きくしてまで行動を起こしたのかは定かではないが...この騒動が収まりつかなければ
間違いなく彼は騒動の発端として罰を与えられることになるだろう、確かに騒動を大きくしたのは彼だが、発端は私の言葉...
彼が私のために...と自惚れる心算はないが、彼は私が原因だと言う事はないだろう...彼はそういう人物である
だからと言ってそれを享受し見て見ぬ振りをして彼が罰せられるのを私は指を咥えて見ている訳には行かない

(神よ、此度の騒動は私が原因です...罰するのであれば彼ではなく、私を罰してください
 私は己で解決できる事案を楽がしたいがために彼を使い騒動を大きくしました、それがニコルのためになるとお題目を設けて...
 彼の罪を全て私が負うとは言いません、彼が1%も悪くないなどと言う心算もありません、しかし騒動の発端は私にあります
 此度の騒動で神のお怒りを買い、神の加護を失おうとも、私は甘んじて罰をお受けいたします...ですから)

そこまで言って私は祈りの姿勢を解き、スクッと立ち上がって天井に阻まれ見ることの出来ない空を見上げながら

「我が友アウラダには、寛大なるお慈悲をお願いいたします...」

とボソリと呟いて、その場を後にする
行き先は唯一つ...この神殿内の司祭の所だ、私が会える範囲の司祭となれば数は限られるが...それでも行かない訳にはいかない
放っておけば遅かれ早かれアウラダは拘束なりなんなりされ罰を受ける羽目になる、それだけは避けねばならない
色々と問題のあるアウラダだ、今回の件もアウラダがおこした騒動だといっても誰も疑いはしないだろう
だがそれだけに...私は私が原因であると話さねばならない、たとえ神の加護を失おうとも、神殿内での信用を失おうとも...
私の言葉を信じ、私のため...と言うのは語弊があるかもしれないが、色々と動いてくれたアウラダという友をこれ以上貶めないために...

私はその決意を胸にし、恐らく私が会えるレベルの最高神官たるアイーシャという女性神官の部屋のドアをノックする
決して高い階位の神官ではないが、彼女に話せば少なくとも神殿上層部に話は伝わるはずだ

「アイーシャ様、おられますか?少々お話があるのですが...」

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PL
独白文章をまた書いてしまいましたよっと、全ての原因はアウラダではない私だと告白しに参りました
アイーシャとイシュタルには面識があるということにさせてもらっていますが問題ないですよね、同じ神殿内の神官だし...
レベルが違うと思うので会える会えないはちょっと疑問ですが...って言うか懺悔室に居ましたっけね、アイーシャ(汗
何かと拾いにくさ爆発の文章ですが、アウラダに全責任を負わせるわけには行かない!というのがイシュタルの考えです
イシュタルにとって彼は好きにはなれないし今ひとつ信用も置けないが、それでも自分の話を良く聞いてくれる友人だと
そういう風に解釈しています、アウラダがイシュタルをどう思っているかは定かではありませんがw

文章的に問題がある可能性もあるので、削除修正が必要でしたら仰ってくださいませ(汗

イシュタル [2012/08/04 09:52]

全てを話そうと決意し訪ねた部屋は無人だった、が運が良かったのかアイーシャには聖堂で会う事ができた
私にとっては目上の人物、彼女にとっては平の一神官に過ぎない私、お互い接点などあろうはずもない
会話どころか滅多に会う事すらない私に声をかけられ彼女はやや驚いた様子だったが
私が話す内容を聞くと彼女は手早く話の内容を理解してくれた

「罰せられるべきは彼の心ではなく、彼をそのような行動に走らせるに至った私です」

アイーシャと話す際、何度となく繰り返した言葉...アウラダの行動は確かに許されるべきではないが
彼をその行為に至らせたのは私なのだと、私は私を罰するかのようにアイーシャに訴えた
それが功を奏したのかどうかは定かではない、だがアイーシャはアウラダにあまりキツい罰を与えないことを約束してくれた
無論完全に罪に問わないと言うわけではない、アウラダのこれまでの素行や今回被害が広範囲に及んだことを鑑み
罰は与えなければならない、という結論に変わりはないが...少なくとも彼、アウラダが神殿を追放されるようなことはないだろう
私はアイーシャの深い心に感謝した、まぁ私も罰せらなかったわけではない
一週間の間食堂で出されるピクルスに対し一片たりとも愚痴をこぼさず綺麗に食べることを課せられてしまった
一般人から見ればたいしたことは無いが、私にとっては死刑にも等しい罰かもしれない...あの緑の悪魔をたべなければならないとは...
こんなんだったらアウラダなど庇うのではなかった、という考えも一瞬頭をよぎったが後の祭りである

ちなみにアイーシャとの会話中、私が必死になってアウラダを庇う様を見て彼女は

『そこまで必死になるなんて、もしかしてアウラダに好意でも抱いているのかしら?』

と言う言葉に対しては

「天地神明に誓ってそれだけはないと断言します」

と答えておいた、あくまでも私が原因で私以外の人間が厳罰に処されるのは我慢がならないだけである
私はアイーシャとの会話を終えると時刻がちょうど昼時だった事もあり...アイーシャから課せられた罰を早速こなす為に食堂へ向かう
アイーシャの言葉を信じ、アウラダに厳罰が課せられないことを願いながら.........でも食べたくないなぁ.........

-後日談?-

アイーシャとの面談からしばらくの時間が過ぎ、アウラダへの正式な罰が下された
今回の件における被害者への謝罪、必要最低限の賠償、そして数日間の謹慎処分であった
あれだけの騒ぎに加え普段のアウラダの素行から言えば比較的軽い処分と言えるものだろう
私はそんな処分を受けたアウラダの元を訪れた、手にはピクルスの乗った皿を持って

「今回の件では迷惑をかけたわね、まぁ遅かれ早かれ貴方は普段の行いから罰せられてたと思うのだけれど
 今回は私が貴方を利用したようなものだし、そのことに関しては謝っておくわ」

謹慎中のアウラダの部屋に入るなり(ちなみにノックはしていない)近くにあった机の上にピクルスが乗った皿を置きつつ私はそう述べた
彼は寝台に腰掛けながら私の来訪を驚いていたような表情だったが、すぐにいつもの調子のいい表情に戻った

「結局アリスは見つからずじまい、今となってはこの神殿に私以外のアリスがいるのかすら疑わしいわ」

皿の上のピクルスを一枚取って口に放り込む、相変らず不味いのは確かだが毎日連続して食べれば以外に慣れるものである
もっとも罰の期間が過ぎたら二度と食べたくないものだが...私はしかめっ面をしながらアウラダに問うた

「何故貴方はあんな事をしたのかしら、それを問うても貴方ははぐらかすだけなんでしょうね、面白そうだったから、と
 それが案外本音なのかもしれないけれど、別の理由があるのなら...」

そこまで言って私は言葉を止め、二度三度を頭を振って笑顔を作り口を再度開いた

「いえ、やめておきましょう、人には言えない事の一つや二つあるものね、聞くのは野暮ってもんだわ
 アウラダ、謹慎が解けたら飲みにでも行きましょう、その時は...気分次第で奢ってあげるわ」

そう言って私はアウラダの胸の辺り(ホントは頭を叩きたかったが届かなかった)をポンポンと叩き
皿の上に乗ったピクルスをもう一つまみして口に放り込んだ、嫌いな味だが、このときだけはその酸っぱさが心地よく感じた

-------------------------------------------------
PL
うあー...全然駄目駄目な気がしてきた、もう何完結させちゃってんの?ってな感じです
遅れに遅れた挙句こんな内容かよ!と文句言われても仕方ないと思ってますorz
もし駄目なら修正なり、削除なりしますのでよろしくお願いいたします

サブGM [2012/08/07 00:24]


"秩序"をもって"正義"を為す――有名な至高神の教え。


オラン市街において、光十字を纏う神官たちは秩序の代名詞である。

神殿への行き来、各所を回っての祈祷や布教、その他雑務など。
そうした神官たちを見かけるたびに、思い当たるふしの有無を問わず、
なんとなく姿勢を正される思いを抱いてしまう市民は多い。




そうした、眩しすぎる光に目を細めるが如き条件反射は、
実は神官たち自身ですら、例外ではないものだ。


初めてファリス神殿を訪れる者はその厳粛さに驚くものだが、
神官といえども生身の人間。

ルーチンワークと化した神殿生活はいつしか秩序ある形だけをなぞるようになり――、
そこから心身の余裕が生まれすぎることは、日常茶飯事だ。
その度にふと光十字を目にしては、これではいけない、と姿勢を正すのである。


だがそれを何度も何度も繰り返すうちに、
背筋を伸ばし自らを律することですら息をするかのごとく、当たり前となってゆく。


『本当に秩序が身についていれば、自然とファリスの教えを体現できるものだ』。
神殿内ではよく耳にする論調のひとつだ。



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「アウラダ、あなたはちっとも身についてないのよ」


アイーシャが説教を始めてから、かれこれ小一時間は経っただろうか。
古くて小さい予備的に使われる礼拝堂、略して説教部屋に呼び出され膝をつくアウラダは、
普段の薄ら笑いは引っ込め神妙な顔で聞いている――ように見える。


「感謝と悩みの声を正しく届けたい、確かに良いことよ。
 それに必死になるのも良いでしょう。
 だけど、肝心のその方法がバカすぎるのよ」

「はい、その通りです」

「・・・あのね、分かってるのなら改めなさい。
 バカによるバカのためのバカ騒ぎなんて、秩序なんかあったものじゃないわ。
 そう無秩序、いえ最早、混沌をもたらしてるの、アナタは」

「はい、そうかも知れません」


ぴし、と若き司祭の眉間の皺が増えた。
この男は、どうしてこうなのか!


「そうかも知れない、じゃあ困るの。
 神の声が聞こえなくなってからじゃ遅いのよ?
 あなた、至高神の信徒だって自覚はある?!」

「もちろん!」

「~~~~~~っ」


ぼふっ。
アイーシャが羊皮紙の束を手近な物置台に叩きつけると、きらきらと埃が舞った。
げほげほ、と咳き込むアイーシャ。


「あー・・・俺ここ、掃除しておきます?」

にこり。アウラダは涼しい顔で、笑みを浮かべる。
薄暗い礼拝堂に差し込む陽がその整った顔立ちを照らす様は、見た目だけは妙に神々しい。
そして、とにかくそれがアイーシャには苛立たしい。


「どうでもいいわよ、どうでもッ!!」

「まあまあアリス様、そう言わずに。
 『整理、整頓、日々の清掃は秩序の始まり』――ってね」

「だーーかーーらーーー、アリスじゃないって言ってるでしょうッ!!!
 げほっ、けほっ・・・・・・ええ、そうね清掃は大切だわ。
 それじゃあこの棟の掃除、一週間」

「棟ごとですか?」

「あら、もっと広いほうが良かった?」

「いいえ、十分! この棟、好みの子が多いですし」

「なら礼拝堂だけにしておくわ」




このような調子で、アウラダへの罰は増えては減り。
何枚か羊皮紙を消費した上で、いたって最低限のものに落ち着いた。


「じゃ、そういう事だから。贖罪に励むように」

「はい、司祭。
 ――ああそうだ、次の約束――ドタキャンになった勉強会の穴埋めの」


・・・コイツ、まだ根に持ってたの・・・そう言えば、まだ返事してなかった。
ま、そうね、今度こそ性根を叩きなおしてやるのも悪くは――。


「――あれ、もう結構なんで、気にしないでください。
 今日沢山学ばせてもらったぶんで、俺はもう十分ですから。
 それより、司祭の教えを首を長くして待っている子が他にいる・・・って気がするんで」

アウラダは胸ポケットからよれよれの羊皮紙を取り出して、

「これ、例の手紙です。
 もう騒ぎを起こすのも懲りたんで、大事に預かっといてくださいね」

と、アイーシャの手に握らせた。



「・・・・・・・・・そうするわ」


人が約束してやろうと隙を見せればこれだ。本当に油断ならない男。
こんな事になるなら、やはり他の神官もこの場に同席させて徹底的に吊るし上げるべきだっただろうか。
いや――これで良かったのだ。
子供の手紙もこうして公にならぬ形で、自分の手のうちにやってきたのだから。
妙な悔しさは拭えないが。


「じゃ、僕はこれで」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・待ちなさい、アウラダ神官」


背中に声をかけると、アウラダは振り返る。


「――――イシュタル。イシュタル=シャルンホルスト。
 今回この程度で済んだのは、彼女のおかげよ。
 
 呼んでも居ないのにやってきて、
 『アウラダに頼んだ自分が悪い』とさんざん繰り返していたわ。
 あなたの友人に、しっかりお礼を言っておくことね」


アウラダの微笑が珍しい形に歪むのを見て、アイーシャはきゅっと目を細めた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――
サブGM(Cocoa)より:

分割せざるを得なそうなので、とりあえずここまで落としちゃいます!
まだ続きまーす!おまたせしてます!

とりあえず手紙はこっそり届いたぞということで(''
サブGM [2012/08/10 21:02]


アウラダの部屋、
窓際に置かれたおもちゃのシーソー。

その右側に置いたピクルス皿を指差して、アウラダは言う。


「そうだな。
 ここに置かれているのは、仮に君の身長分の量のきゅうりとしよう。
 
 さて、これを『秩序ある形』にしたい。
 アリスちゃん、君ならどうする?」


逆光でアウラダの表情はよく見えない。

ニヤニヤ笑っているのか、それとも真剣にこちらを見ているのか。
イシュタルにはまるでその判別がつかない――。



---------------------------------------------------------



ジネブラは、朝が楽しくなった。

「おはようございます!
 今日も一日頑張ってくださいね。ファリス様のご加護がありますように!」

近所の人への、いつもの挨拶。

「やあおはよう、神官さん。今日はごきげんですね」

「あ、わかります?」

果物屋の若い男の脳裏に、『もしかして、良い人でも出来たんですか』という質問がよぎった。
しかし神官服に身を包む彼女にそんな事を聞くのは憚られる。

「何か良いことでもあったんです?」

「ええ、見てくださいこの鞄!
 ここのとこ、あたしの名前が入ってるでしょう?
 これ、デザイナーの人が特別に入れてくれたんですよ、知人が頼み込んでくれて。
 すっごく人気のデザイナーだから、まさかこんな風にしてもらえるなんて、びっくりです!」

にこにこと笑う黒髪のジネブラ。

「・・・かわいいなぁ。
 ・・・・・・・・あ、いや、可愛い鞄ですねあははははははは!
 僕もそろそろ新しい鞄を買わなくちゃだ」

「あ・・・じゃあ今度紹介しましょうか? この鞄のお店」

「え、いいのかい?! それは助かりますよ。いやー、うれしいなあ!」


「「じゃあ、また明日」」



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「貸し出しですか? ではこちらに署名を」

ファリス神殿の図書室。
ラーダ神殿などには比べるべくもないが、それでも神殿内の図書室としては立派なものだ。

(あれ、アウグスタ。また試験なんだ)

『課題の締め切りが重なってるらしい』とか、『今はこれにハマってるらしい』とか。
図書室担当にとって、常連の借りる本の内容を確認することは業務の中のちょっとした楽しみでもある。
アウグスタの積み上げた本の量とジャンルは、明らかにテスト前、という風情だった。


「・・・では、お借りしますね。ありがとうございます」

華奢な腕で本の山を抱えて急ぎ足で去っていくアウグスタを見送りながら、係は思う。

(アウグスタは本当に真面目だから。こういうヒトが出世するのは良いことだよな)
(誰かが彼女の勤勉さを見て上に進言した?
 やっぱり見てる人は見てるんだなぁ。いや、神が見てるのか?)
(・・・よしっ、俺も頑張らなくちゃな)

「はいっ、返却ですね? ではこちらに署名を――」

この日、図書室担当の男には珍しく上司に働きを褒められたのだった。



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ファリス神殿と賢者の学院の間に出ているパン屋台は、エグランチエが最近見つけたお気に入りの穴場スポットだ。
というのも、その店のパンは規則正しい時間で行動する神殿関係者があっという間に買い占めてしまい、
何かとルーズになりがちな魔術師達が目にすることなく、いつも売り切れてしまうのだ。
だから、たまたま遅刻した遅い朝に立ち寄って見つけた店だった。
ここのパンはふかふかで美味しいし、可愛らしい猫がいるのも良い。


エグランチエは今日も講義室を一番で抜け出して、それでも駆け足でようやく間に合った。

『アリスのパン屋』・・・? こんな名前だったかしら、このお店。
真新しい手書きの看板にエグランチエは内心首を傾げたが、
急いだことでより進行した空腹の前には、そんな疑問もあっさり吹き飛ぶ。


「やあ、いらっしゃい。
 今日は新作のピクルスパンもあるよ!
 これがさ、世話になった神官の兄さんにアイデアを貰ったんだけど、
 作ってもらったら案外評判なんだ」

「にゃー」

神殿の人たちの好みはよくわからない、とエグランチエは思いつつ、
試しに一つ買って帰ることにする。


「にゃー、にゃー」

ふと見れば、なぜか新しい看板の前で、黒猫が胸を張って鳴いている。
ふふっ、この看板がお気に入りなのかしら?



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 ニコルへ
 
 
 返事が遅れてしまってごめんなさい。
 新しい家ぞくとは、どう? うまく過ごせている?
 そう、努力はたいせつよ、がんばってね。
 
 友だちとけんかしたのね。
 そうね、ケリーはきゅうりをすてるのを今すぐやめなくっちゃいけない。
 正しいことを友だちに教えるニコルは、とってもえらいわね。
 これからもずっとそういう正しい気持ちを忘れないでほしいと、私は思います。
 
 私はそういう時、ありがとうやごめんなさいを言うことにしています。
 だけど、いきなり言うのはとっても勇気がいることだから、むずかしい時もあるわね。
 
 そこで、ある勇敢な神官の話をひとつ、私からあなたたちに教えます。
 そうよ、この話はニコルだけじゃない、友だちみんなに教えてあげて。
 (それから、キライなんて言ってごめんなさいってきちんとあやまること。)

 私の周りにもきゅうりのつけ物がきらいな神官がいてね、困ったものよ。
 だけどね、その神官は友だちを助けるためなら、そのきゅうりを食べてもいいんですって。
 しかも一週間、朝から晩まで、ずうっとよ?

 ニコル、あなたは友だちのために、すてるほどきらいなものを食べ続けられるかしら? ケリーは、バルはどうかしら?
 ニコルが困っているときに、ケリーとバルは食べてくれるかしら?

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司祭アイーシャはペンを置き、窓の外に浮かぶ月を見上げた。

(私なら? アイツのためになんか、人参ひとかけらでも食べてやるもんですか――)

もう、夜も深い。
神官戦士として功績を認められたとはいえ、弱冠16歳。
手紙を書くには遅すぎる時間だが、眠れない夜に何もせずにいるアイーシャではないのだ。



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サブGM(Cocoa)より:

BGMはこれで。
古くてわかりやすい歌ですが、ここはパキっと明るいのもいいかなと(笑)

いろいろ書きたいこと書いてたら長くなりすぎて編集に手間取りました(、、;
次で終わります! 出来上がってるので連投!

サブGM [2012/08/10 21:05]

あれからアウラダは与えられた罰を従順に、そして誠実にこなした。

素直に自身の罪を認め、侘び、非難の言葉も投げられるままに頭を下げ回る姿。
それは一時期、あちこちで神殿関係者に目撃されたものだ。

それだけ声をかけていた相手と被害が多かった、という話であるのだが――、
しかし真摯な謝罪の姿勢を評価する人物も、ちらほら現れるほどだった。


とはいえ、多少株が上がったところで、そこら中で耳にするアウラダの噂話といえば・・・、
『今は謹慎中なんだって』『じゃあ、しばらく平和だ』
『それでもまだ声が聞こえるっていうんだから、しぶといよねアレも』
『ファリス様の寛大さもいつまで持つか』――などといった悲惨なものだ。


一方、アイーシャ司祭がイシュタルへの罰とアウラダの関連性を公開することは無く、
同時期にイシュタルがきゅうりを食べ始めたのを知っている
ごく親しい女性神官には二人の関係を訝しまれたりもしたが、
アウラダの噂に比べれば、イシュタルの噂などは無きに等しいと言えるものだった。



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アウラダの部屋のドアを開けたイシュタルの目に飛び込んできたのは、
乱雑に置かれた汚れ物でも、女性受けしか考えていないような気障な内装でもなかった。

物置のように沢山の物が積まれた二段ベッドの上から、床まで斜めに立てかけられた長い板。
これは下に倒れているおもちゃの馬車のようなものを転がすのだろうか?

また、同じくベッドの上からは糸で吊り下げた大小の重りがたくさん連なっている。
・・・揺らして遊ぶのだろうか。

酒びんを二つ繋げてある物もある・・・ひっくり返すと中の砂が落ちる仕組みだろうか。
他にも、手製のおもちゃが狭い部屋のそこかしこに置かれている。
まるで工作好きの子供部屋のような状態だった。

どの部屋にも置かれている書き物机は見る影もなく、工作用の作業台と化している。
台の上の羊皮紙には、書きかけの設計図。


ひどく混沌とした佇まい。
そのわりに、掃除と整頓は行き届いているようだが――。



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「ハハハ!」

イシュタルに胸の辺りをポンポンと叩かれ、
アウラダは同じようにイシュタルの頭をポンポンと叩き返した。
それから子供をあやすように頭を撫でる――自分は子供みたいな部屋で暮らしているくせに。

「結局手紙の主が見つからなかったのに、奢って貰えるとは光栄だよ。
 ほんとうは俺が君にきゅうりの酢漬けを奢るって話だったのになぁ。
 ま、そっちは十分間に合ってるみたいだが」

イシュタルの持ってきたピクルス皿をひょいと持ち上げる。
イシュタルは軽く抗議の声を上げたが、聞き入れられることはなかった。

それから窓際の木のシーソーを指さして、

「これを動かさなければ、秩序が保たれている――、
 という人がいるが、現実には食べきれないほどのきゅうりの酢漬けが存在している」

板の右側に皿を置いた。
ぎぃ、と音を立ててシーソーは右側に傾いていく。




「そうだな。
 ここに置かれているのは、仮に君の身長分の量のきゅうりとしよう。
 
 さて、これを『秩序ある形』にしたい。
 アリスちゃん、君ならどうする?」


・・・急に何言ってるのかしら、このお調子者。
そうイシュタルは思いつつも、一応謹慎中の暇つぶしになればと付き合うことにする。


「無理やり食べるか、そうでなければハザード河に身を投げるかのどちらかね」

「ハハハ、不貞腐れるなよ。
 ま、君はちっちゃいから沈まないだろうし、身を投げても安心だろうけどな。
 
 うん、頑張って食べるのはエライし、それも良い案だ。
 だけどこういうのはどうだい?」



そう言ってアウラダは立ち上がり、棚から一枚の皿とフォークを出してきて、
イシュタルの皿に乗ったピクルスを半分移してから、左側に乗せた。


「・・・シーソーの傾きを全て一人でバランスを取ろうなんてのはね。
 俺に言わせれば、土台無理なのさ。
 
 多ければ二人で分ければいい。
 それに楽しい。だろ?」


ぎぎ、と音を立て、シーソーは水平に近い状態に戻る。
アウラダは自分の皿を取り上げ、パクパクときゅうりを食べだした。


「ちょっと、これは私のなんだから・・・!」

「君のなら良いだろ、俺のにしても」

「そ、そんなわけ無いでしょう」

まあ、この緑色の悪魔を食べてもらえるならそんな有難いことはないのだが・・・。
それでもこれは自分に課せられた罰だ、イシュタルも慌てて自分の分を口に入れる。

「お、美味い。きゅうりの酢漬けって案外暑い時期に合うもんだね」



私はその最悪な時期が早く過ぎればいいって思ってるけどね。
・・・ああ、酸っぱい。



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『謹慎中のアウラダの部屋から、空いた皿を二枚持った女性神官が出てきたらしい』

――神殿内にそのような噂が流れるのは、もう少し後のことである。





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サブGM(Cocoa)より:


「特定困難きゅうり」これにて(GM側進行としては)終結!
いやぁ、ただの〆レスにひどく時間をかけてしまってすみませんでした(、、;
この3倍は書いてしまうほどいろいろ楽しかったです( ノノ)青春っていいですね!


もしまだ書きたい部分があるという方は、自由に書いてやってください。
(クーデルさん&GMはもちろん、アウラダを出してくださったがるふぉさんとか!猫とか!)

イシュタル視点としては、結局アリスを特定できてないわけですが、
『次からはアイーシャ宛にしてね』という追伸付きで、アイーシャは結局ニコルに返事を出したことでしょう。
それでニコルがどうなったかはご想像におまかせで(''*



■イシュタルへの報酬

経験点500 + (男友達が出来た夏の思い出)


クーデルさんからレス頂いた時点で決まってたわけですし
先に解放の旨書いておけばよかったですねハハハ...(すみませんすみません)
もう、とにかくお待たせしまして申し訳ないっ!

ということで。
イシュタル&クーデルハイツさん、ありがとうございました&お疲れ様でしたー!>w<
GM [2012/09/14 00:55]
例えば、キムに訊く。

「うん?・・・あんた、変なことを訊くねえ!
 あははっ
 ・・・ああ、ごめんね、 ふ ふ。ふふふっ!

 『なんで明日生きてるか』って?

 そりゃもちろん!お客さんがいて、仕事があるからだよ。

 ココはアタシにしか出来ない仕事がある。
 アタシはそう自負してるよっ」



そして日時は変わり、日の傾きかけた夕方の静かな中庭に面した廊下のベンチで、アウグスタと出会う。

「そうですわね・・・。
 わたくし、は、・・・。

 あたりまえ

 だからですわ。
 まだ、あたりまえなのです。
 わたくしは知っています、自分のことを」



ジネブラ。

「あっはっ!
 おっかしいこと訊くんだ!?

 でも、そうねえ・・・。
 ・・・・・・。
 それが人生、だからかしら?
 わかんないわそんなの!あははっ!
 ・・・そんなもんじゃないの?」



アリスこと、アイーシャならば。

「謹慎は堪えているのかしら?アウラダ神官。
 己の存在意義を問い直す・・・いいことね。
 精進しなさい。
 期待しているわ」


「・・・質問に答えていなかったわね。

 私だから よ」

アイーシャは笑った。

「十二分な答えをしてしまったわ」

そう笑い続けた。



アウラダは、彼女らに背中を見せた。
その顔は微笑んでいた。

彼は、嬉しかった。

そしてイシュタルの返事を聞きたいと思った。