扉
GM
[2012/06/27 22:41]
このノックはメリンダ。
僕は、一瞬だけどうしようか迷った。
迷って、でも・・・・・・隠した。
「坊ちゃん、ルイネ坊ちゃん。美味しいご飯の用意ができましたよ。」
部屋の扉が開いた時、僕ははにかんだ。
「さあ、食べましょう」
「うん」
両の手をあげて、いつもより大振りに体が動いてしまう。
そんな様子をメリンダに知られてしまったみたいだ。
「あら、今日はなんだかごきげんのようですね」
まだ、秘密。
「うふふー」
ルイネがご飯を食べるときは、メリンダは一緒に座ってくれる。
でも、一緒には食べないんだ。
ルイネのことを、じっと見ていてくれるんだ。
「ねえメリンダ」
「はい、坊ちゃん」
「今日は・・・」
今日は・・・
「今日は、満月なのかな?」
「・・・・・・」
「満月?」
メリンダの顔を覗く。
ねえ、教えてよ。
「そうでございますよ、坊ちゃん。今夜は満月です。
狼が吠えて外をうろつく日なんです。
だから今夜は早く寝ましょうね。
メリンダも一緒に、そばについていますから」
「・・・ううん、今日は一人で寝るよ。
ルイネはいつも、一人で寝てる。
だから、今日も一人で寝る!」
「坊ちゃん。今日はメリンダが一緒にいます」
「いい!ひとりがいい!」
「・・・・・・」
どうして、メリンダ。どうしてそんな顔をするの。
ヤダ、ヤダ。
「ご飯もういらない」
椅子から降りる。
「もう、ルイネは寝る!」
だだだっと、走って部屋に入った。
『走ってはいけません』
いつも言われることを、メリンダは言わなかった。
ヤダ、ヤダ。
枕の下に隠した手紙をつかむ。
「伝えたかったこと・・・」
この手紙を読むと、すごく元気が出るよ。
それはもう。
ねえ、ルイネ、冒険するよ。
----------------------------------------------------------------------
窓から降りて、誰にも知られないように窓からおうちを出て、銀木犀の下に行くんだ。
おおかみさん?・・・窓の外からは聞こえない、きっといないよ。
ぎゅ、と手紙を握り締める。
持っていくものって、何かあるかな。
・・・手紙は何も持って行ってなかったよね。だからきっとルイネも大丈夫。
「ん しょ」
窓を開ける。外が暗い。
風が湿っていて、ぬるい。
手紙はいつもここから冒険していたね。
窓の下を見る。
「暗くて、見えない・・・」
でも野薔薇は大丈夫だった。
ルイネだって、できる!
「手紙・・・。行こう・・・?」
野薔薇。一緒に。
―――――行こう!
ルイネは、飛び込むよ、今。