"手紙"
エグランチエ
[2012/07/10 22:29]
小さい体を抱っこして月明かりの下を歩く。
その柔らかい髪からは小さい頃の自分と同じ匂い。
ルイネ君の瞳の向こうには幻想的な風景が広がっていました。
人が夢見るとき瞼の中できっと瞳はこんな色を写しているのでしょう。
夢の中で夢と気付かず話すような口調で。
ルイネ君は私を見上げて呟きました。
「―――――あのね、秘密だったの」
「何を、秘密にしていたの?」
「これからあそこで、"手紙"と待ち合わせをしてるんだ。
ぼくはね、まだ会ったことのない、"手紙"。"手紙"はね、冒険家なんだ!
これからルィ...ぼくを、冒険に連れて行ってくれるって、約束したんだ!
ねっ、ねっ、それがね」
「ふふっ、もうすぐ会えるわ。」
「あそこなんだ」
あそこ、そうルイネ君が指差した場所は先ほど私が腰掛けていた場所。
約束の銀木犀、高級な家並みが聳える中で一際目立つ大きな樹。
その麓にルイネ君を下ろすと私はその隣に腰掛けたの。
そして持って来ておいた毛布に私達は包まりました。
「...なんで、お姉さん知ってたの?」
「なんでだと思う?」
「もしかして、お姉さん..."手紙"の友だち?
ねっ、もしかして、"手紙"を知ってる?
"手紙"って、しゃべるの?歩くの?強いの?」
「ふふふっ、"手紙"の事は何でも知っているわ。
おしゃべりで、小さい頃から駆け回ってばかり。
そしてとっても強いのよ、剣も魔法も使えるのだから。」
「そうなんだ!"手紙"ってすごいんだ!元気なんだ!」
「ふふふっ。」
「早く来ないかなあ"手紙"。ああ、待ちきれないよ。
今日はレックスからのお土産を持って来てくれるんだって。」
「―――え?」
「"手紙"は僕みたいな子に優しいんだ。
家に篭りっ放しだった女の子を連れ出して、
外で遊ぶ楽しさを教えてあげたこともあるんだって。」
「―――そ、そうなんだ。」
どういうこと?そんな事を書いた覚えはないわ。
どうやら私ともう一人"手紙"を演じた方がいるみたい。
ルイネ君の親でしょうか。今日のこと知っていてもおかしくないわ。
「―――"手紙"の名前は、"野薔薇"っていうんだ。
お姉さんの名前は、なんていうの?」
「知りたい?」
「うん。もしかしてアレル?タリカ?」
「ふふっ、はずれ。私はエグランチエ。
そしてまたの名を―――"野薔薇"」
「...え。」
「そうさ、僕が"手紙"だよ、ルイネ。元気だったかい?」
男の子っぽい口調でそう言ってルイネ君に微笑みかけました。
もしかして、ガッカリしたりしてしまわないかしら。
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お待たせしてしまい申し訳ございません。
よろしければ再び書きまくります...w