手紙の冒険記『妖魔の森』

エグランチエ [2012/07/10 22:29]

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やあ、ルイネ。
また君と話せて嬉しいよ。


さあ、今日も冒険の出来事をお話しようか。ルイネは森に入った事はあるかい?君の家の近くにある雑木林なんかじゃないよ。本物の森だ、深い森だ。もし入った事があるのならもう二度と入っちゃだめだよ。延々と続く変り映えの無い風景は方向感覚を狂わせる。森は天然の迷宮だ、壁の無い迷宮だ。奥へと進んで気が付けば引き返す道がわからなくなっている。そう、僕は今回の冒険で森に迷い込んでしまったんだ。

その森はビスターシャの森と呼ばれている。エストン山脈南部東麓に位置する深い森だ。樹齢が数百年を越える木々の立ち並ぶ森の内部は暑い葉の屋根に覆われていて昼間も薄暗い、中に入ろうとする物好きは僕みたいな冒険家だけだろう、なぜならば奥にはゴブリンの親玉が溜め込んだ財宝が眠っているという噂を聞きつけたからだ。

僕は剣を持ち、松明を燃やし、恐る恐る森の内部を進んでいった。時折、突然と茂みから飛び出すカラス共におっかな吃驚しながらね。この時は僕はゴブリンばかりに気を囚われていて本当の恐怖である森の迷宮の恐ろしさに気が付いていなかったんだ。ふと、うなり声が聞えた、ゴブリンの声だ。僕は近くの茂みに隠れた、どうやらうなり声は近くにあった洞穴から聞えてきた物らしい。間違いない、ゴブリンの巣だ。財宝を手に入れるには、ゴブリンをやっつけるしかない。

天才的な剣の腕を持つ僕でもゴブリン数匹を同時に相手にするのは骨が折れる、何とか誘き寄せて一匹一匹づつ懲らしめていくんだ。もしかして僕がゴブリンの家から宝物を盗む酷い奴に見えるかい?安心して、こいつらの財宝はこの森の近所の村々から盗み出された物なんだ、僕はその村の人たちから頼まれて財宝を奪い返しにきたわけさ。さて僕は早速足元に落ちていた石ころを一つ拾い上げた。そしてその石ころを――――


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―――ふう、少しだけ休憩しましょうか。
この手紙は最近ルイネ坊ちゃんが楽しまれている遊びです。

最初はルイネ様が書いた物を川に流して、
奇跡的にそのお返事が届いたようですけれども。

二通目が届くまでその間約一ヶ月。
子供には長すぎる時間です、待ちくたびれてしまうでしょう。

その間に私、メリンダがこうしてお返事を書いていたのです。
坊ちゃんは毎週何通もお返事が来ていると思っています。

どうしてこんな事をしているのかと申しますと。
あんなにお喜びになる坊ちゃんを久しぶりに見たのです。
メリンダはその坊ちゃんの笑顔が本当に嬉しくて嬉しくて。
最初にお返事を下さった方には感謝し足りません。

そのおかげか病気の進行が遅くなっているようなのです。
修道院のレンドルフ神父も驚かれていました、まさに奇跡だと。


しかし、少し不安に思う事もあるのです。
それは次の満月の夜、坊ちゃんと会う約束をしているのです。

坊ちゃんは豪商の息子、変な事を考える輩もいるかもしれません。
その晩だけは遊びに行かないよう注意しないといけません。

その晩はルイネ坊ちゃんをと一緒に眠る事にしましょう。
もしかしたら私の暖かさに約束を忘れてくれるかもしれません。


ああ、マーファ様。
私達にお力を―――。

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二連投です、家政婦は見た。
メリンダを銀木犀に連れて来たいのです...w