メリンダ

GM [2012/07/15 12:38]
私は少し取り乱しました。

二人きりの館、私が最後に出るというのに正面玄関に鍵もかけず、
外套も持たずにまっすぐ出ました。

前を見据えて。

言い訳など用意しておりません。

あの銀木犀の樹齢について、私は知りませんでした。
私が来るよりも前からあり、私が去るあともここにいるのでしょう。
存在することが当たり前だった銀木犀は、何か、私の心に引っかかりました。

足音、気配も消さずに、私は一段盛り上がった木の傍へ向います。
女性と坊ちゃんがいます。

私は―――一瞬だけ、最初にどう声をかけようか迷いました。

「坊ちゃん」

何をしていますか。
しかし私は怒りに来た訳ではないのです。
けれどここにいるお二人には、そうは思われないでしょう。

誤魔化される前にアクションを起こしましょう。


「Eglantier」


野薔薇。 "手紙"のことです。

これで反応が乏しければ、ことはもっとややこしくなります。
もしかするとファビエンヌ様が、ルイネ様の病状が悪化しないことについて、
私の素行を探ってきたのかもしれません。
ファビエンヌ様から送られている食材を破棄し、
新たに外部から取り寄せていることが見つかってしまったら。


しかしその心配は、安堵に変わりました。

彼女は、驚きながら、微笑んだのです。

「メリンダと申します」

「あ・・・ メリン

私が冒険者風の彼女に声をかけると、坊ちゃんは座ったまま私を見上げ、
これから怒られると構えたように縮み上がっております。
その様子が素直でかわいらしくて、私はふふと笑ってしまいました

「あら、坊ちゃん?
 ねんねはどうしましたか?」

「~~~~~っ」

私は野薔薇に向き直りました。

「ここでは、声が風に乗って人の耳に届くかもしれません。
 あなたにお話したいことがあります」


もう、私の知恵だけで戦うことには、限界を感じていました。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
GMより:

きたよ!よ!