いたずらごころ

GM [2012/07/01 12:45]
アウラダは、おや、という顔をする。

「へえ。出すの」

そして、ニヤリ。

「僕にも君からの手紙が欲しいな」

飄々と。



――――どうしてあの男が至高神の声など聞けるんだろう。

人々はたまにそう口にし、語らい、いつもひとつの結論で終わる。

『彼もまた必要な正義』

それは、彼を肯定することで間接的に自分らをも肯定するからだった。

しかし誰が彼のことを本当に考え、知っているだろうか。
彼は自分のことを殆ど言わない。
だから周りが彼について何を考えても、それは憶測の範疇を出ない。

ある意味では、アウラダは皮肉に神秘的であった。
悪意を込めてそう言う者も存在する。

それが、この、アイーシャ。



「あんっのスケベ男!!!」

神殿の離れ、厠。
がぁん、と便器を蹴り上げる、若い女性の神官。

「あいたたたた・・・。
 おーイタ・・・」

細い女の足では、焼き物の塊は硬すぎた。
アイーシャは痛む爪先を浮かし、じっと耐える。

「・・・余計に腹が立ってきたわ・・・」

いけないいけない、と心のなかで呟き、足首をぶらつかせたまま笑顔を作る。

「怒っては闇に支配されてしまうわ。 笑顔・笑顔♪
・・・なんて、やってられませんよファリス様ぁ」

ふにゃりと口がへの字に曲がる。

「大体、意味がわからないのよ、あの男。
――――今日から君の名前はアリスだ、なんて。
 私はアイーシャっていうのよ、16年間この名前だったわ。
 そしてこれからも絶対にそれは変わらないわッ」

厠の個室の中で、まるで相手がそこにいるかのように、アイーシャは一人で喋った。

「ほんっと、意味の分からない男!!」

・・・・・・。

――もしかして、嫌がらせ?

アイーシャは考える。

――私があの男の誘いを直前に断ってしまったのを、まだ根に持っているのかしら。
そんなまさか。嫌な記憶をいつまでも覚えているような人間じゃないはずよ。
自分の気分が下がることを、あの男は何よりも嫌がるんだから。
いつだって自分が大事。
まわりの女なんか、自分の気分を良くさせるために利用しているだけにすぎないのよ。
本当にイヤな人間よね。ああ、ダメ、考えちゃダメ。また腹が立ってくるわ――

「ふぅ」

息をつく。

――それで、ええと、何だったかしら。

「あ、そうだわ・・・」

私、アイツに言ってなかったんだっけ。
だって言えないじゃない。お仕事の話は、いくら同僚とはいえ漏らせないものなのよ。

前日、急に、妖魔退治に出かけることになって、
アウラダに勉強を教える約束を直前で反故にしてしまったの――

アイーシャはそれが半月前のことだと思い出す。

――私、まだちゃんと謝っていなかったわね――

もう、爪先に痛みはなかった。


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GMより:

アイーシャが手紙の"アリス"
>ニコルが聞き間違えたかなんかした?
 ↓
アウラダは何の気なしにアイーシャへ冗談で
「(なんか名前が似ているなあ)きみは今日からアリスね」
 ↓
実はドンピシャ
 ↓
でも手紙のことはアイーシャは知らず、
アウラダはアイーシャが手紙の正しい宛先などとは思っていない(知らない)

っていう、すれ違いの瞬間です。
さあ!どうしましょうか!


このすれ違ったままイシュタルはニコルに返信をしてきゅうり談話に花が咲いて、
それが後々アウラダとアイーシャに知られて「この子・・・!きゅうりッ」ってなってもいいですし、すれ違いを正して本来の主に手紙を渡してもいいです。
しかしその場合、どういう風にPC、NPC、を動かしてすれ違いを修正する流れに持っていくかは、クーデルさんにお任せです!