アウグスタとアイーシャ
GM
[2012/07/22 17:48]
「うん、うん・・・」
アイーシャは、最近自分の下についたばかりの侍祭の話を聞いていた。
今朝、通い神官のジネブラから聞いたという話。
それは、アイーシャへ相談する侍祭の身にも起こったことであった。
とあるファリス神官があちこちで不可解な言動を、多数の人間に繰り返しているというもの。
「――――それで、私からはどういたしましょう・・・?」
懺悔にも使われる、ごく小さな相談室。
格子が嵌められた窓は木戸が降ろされ、明かりが入っている。
その明かりは、アイーシャの目の前の侍祭――アウグスタの前髪を照らした。
アウグスタは、今自分が相談した件について、報告だけでこの問題が済むとは思えず、自らの取る態度をアイーシャに仰ぐ。
「そう、ね・・・」
アイーシャは手で額を押さえ、悩んだ。
――ったくどういうことになってるのよおおお!?
あのバカは!一体、何をしたいわけ?――
うーん、と唸ったあと、アイーシャはアウグスタへの回答をまとめた。
「そうね。
多分、アウグスタが周りから聞いたような考えには、この先きっとならないわ。
そこは安心してもいいわよ」
そう言われるも、アウグスタからは不安の表情が取れない。
「うーんとね、あのバk・・・あの神官は、」
言い直しても、やはり、避けては通れない。
「あの神官は、バカなのよ」
「・・・はぁ」
ぽかんとした返答は、想定内だ。
「かの神官自体に悪意はありません。
むしろ彼自身、いいことだと思ってやっている、確信犯ね。
だから、動機として神の意思には反していないの」
でも・・・と喉まで出かけているアウグスタに対し、アイーシャは言葉を続けた。
「うん、動機はともあれ、行い自体は最低よね。こればかりは私も、ひどく頷くわ」
アイーシャは思った。
アウラダは、メビウスの輪だ。
捻れているから裏表がなく、捻れているのにおかしくない。
正義か悪か、裏か表か、白か黒かで考えがちなこの神殿内を、時に混乱させる。
「私から、アウラダに直接問いただします。
そして祈りを行なってもらいます。
その時もし、奇跡が起こらないならば、起こらないなりに処分します。
変わらずに神の奇跡が使えるならば」
アイーシャが信じるものは、ファリスの判断だけだ。
「アウラダは問題解決において方法を間違っているので、
私達が協力し、彼の抱えている問題を正しく解決しましょう」
そうして、小さな部屋の中で向かい合っている二人の神官に、笑みが浮かんだ。