ファン&アンチファン

GM [2012/06/17 03:10]
誰が置いたのだろう。
いつからそこにあったか、ジャンは気がついていただろうか。

ジョージの角なしミノタウロス亭のジャンの個室。
机の上に、四つ折りに畳まれた羊皮紙。

開けば一面、びっしりと几帳面な文字で書き記された手紙は、東方語。


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敬愛なる ジャン・マルクル・ゴダール へ


いつも拝聴しています。


最初に僕、ヒューゲル・ボンノがジャン・マルクルの音楽に出会った時のことから書きたいと思う。

あれは、日付にすれば、最近の出来事だっただろうか。
ああそうだね。5月のメイプリンセスコンテストの時だった。

いや、僕は、メイプリンセスなどというものに興味はないけれども、
5月の華やかな催事があるのに外に出ないで家に篭っているほど、根暗じゃないんだ。
はははは(笑) 本当だよ。

そして街をうろついていると、着飾った女性には興味ないせいか、どうもつまらなくてね。
いや、僕は、男性に興味があるっていう訳じゃあないんだよ。本当だよ。ジャン、本当だよ・・・?

まあいい、とにかくそうしていると、ジャンが現れた。

僕はもう、自分の足元に亀裂が走ったかと感じたくらいの衝撃を感じた。
ステージ上にサッと現れた一人のグラスランナーに、これほど目を奪われたことは、かつてない。

あの間の溜め具合、喋りのリズム、どれをとっても完璧だ。
そう、瞬間から僕はジャンのことを"テンポの神"なんじゃないかって思ってる。本当にね。
ジャン、あなたは、テンポの神なのかい?

実は僕は、テンポに関して煩いところがあるんだ。
ちょっとばかしテンポのことについては詳しいつもりでね。

だから、ジャンがテンポの神だとしても、少しばかり僕の知識を披露することを許しておくれよ。

あのエキシビションでジャンは、「オーレー・オ・レー」の後に正しく休みを置いた。
だけど僕は、もう僅か半拍だけ休みを置いたほうが完璧だったと思う。
そこだけが、僕がジャンに対してずっと納得いかない部分なんだ。

そしてそれをしてしまったジャンが、あれから気になってしようがない。

僕は色んな酒場を覗いて・・・ジャン、君を探したよ。
あなたが奏でる音楽、一つ一つをコマのように頭で考えながら聴いた。

音は素晴らしい。
だけど、ジャン。
テンポがいつも形どおりすぎて、"生きていない"ように感じる。
完璧すぎて、リアルじゃないんだ。

だから僕はもう、ジャンの音楽を聴くことをやめたい。

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本文以外の場所に、文字はない。



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GMより:
JG用レター!
きもいかんじで。

差出人の住所はわかりません。
多分、JGが行なってきたライブの中でいつも同じ人がいたら、彼です。

しばらくはこちらのカテゴリ「生きる」を使用してくださいませ。