初めて聞く住所

GM [2012/06/17 03:08]
彼はアレル=リリー。
冒険者家業で名を上げつつある青年だ。

そんな体を張った仕事をする彼の休暇は、読書に充てられる。
・・・・・・はずだった。

「今日こそは、掃除しないといけませんね・・・」

蜘蛛の巣は何度払っても部屋の隅に張られている。
埃はなぜ積もるのか。

「う~ん」

考えようとして10分が過ぎたが、それを考えても意味が無いことに気がつく。

今はもう、正午を回っていた。
その時。

コンコン

外に通じる木製のドアが、ノックされた。

「14丁目3番地はこちらですか」

若い男の声が聞こえる。この廃屋の住所。
しばらく耳にしていなかった―――というよりもほぼ初めて聞いたこの家の住所に、
アレルは一瞬だけ戸惑い、息を潜めた。

ドアの向こうに立つ人物は、少し待った気配だったが、留守と思ったようだ。
下の隙間に、何かを差し込んで去った。
石畳と羊皮紙が擦れる音がした後、去りゆく足音が聞こえる。


アレルがその身のこなしで音もなく、気配をも消しドアに寄り、
隙を見計らって羊皮紙を引きぬく。

彼は慎重に羊皮紙を観察し、開いた。


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アンソニーへ


ニナです。

・・・元気? あ、わたしはね、何とか、元気だよ。
何とか って、変、だよね・・・。
ん、元気です。 すごい元気。 うん、フツーってところ?へへ

前に会ったのは、いつだったっけ・・・?
わ、忘れてなんかないよっ ええっと確か・・・お、覚えてるよ。
3年前、だったよね。

手紙を出すのは、5年ぶり・・・くらいかな?
ちゃんと、その時の手紙、読んでくれた?
来なかったよ、返事。 ・・・ちゃんと、届いてたのかなあ・・・?

ねえ、お母さん、心配してるよ。
わたしも、アンソニーが元気でやってるか、今どうしているか、心配してる・・・。

だから、ちゃんと返事、出してね。

お肉屋さんに言えば、届けてくれるって、きいたよ。
でも、どうなんだろう・・・?
ごめんね、アンソニーからも、お肉屋さんに、聞いてみてくれる・・・?


じゃあ、待ってます。

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そして、住所が書かれていた。



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GMより:
アレル=リリーはこちら!

NPCの注文が難しいでぇ・・・GMの引き出しにないタイプやでぇ

差出人は、放蕩人の家族らしいです。
おそらくアンソニーという人は、デタラメの住所を伝えていたのでしょう。
そして彼の消息は今のところ不明です。

アレルはどうするのでしょうか。

しばらくはこちらのカテゴリ「届かない宛先」を使用してくださいませ。