時を繋ぐもの
サブGM
[2012/07/13 03:18]
「どうぞ。」
アレルが両手を広げ、迎え入れる。
ニナは戸惑い、どうしたら、とアンソニーの顔をちらりと見る。
「・・・・・・」
黙ったまま答えない。
だけどニナには分かる。
これは欲しい物を我慢してる時のアンソニーの顔だ。
「ありがとう、アレルさん・・・」
「あの・・・」
「あの・・・わたし」
長い時を経て、ニナの意識は一つに定まり辛くなっている。
それを必死にとどめるように、ニナは言葉を切りながら話す。
「わたし・・・変だな・・・って、思ってたん、です」
「手紙の住所・・・"14丁目3番地"・・・変だな・・・って・・・」
確かに俺の聞いたことがない住所なら、
ニナだって聞いたことはないだろうな。
アンソニーは自分の愚かな策を反省する表情を浮かべている。
「ううん・・・ちがうの・・・違う・・・」
アンソニーの表情を見て、首を振る。
「・・・覚えてた・・・」
「・・・ひゃくよんじゅうさん、こ」
「・・・わたしの家から・・・アンソニーの家まで・・・」
143枚の、石畳。
「こんな住所にするの・・・アンソニーしかいないんじゃ、って・・・」
二人だけで数えたもの。
「――ああ、物覚えの悪いお前にしちゃあ、上出来だぜ。
ニナから手紙がきて、何となくその数字が浮かんだんだ。
まったく俺もとんだ大馬鹿者だ」
黙って聞いていたアンソニーは、
その頬から流れ落ちるものにはまるで気にも留めず、
嬉しそうな笑顔を浮かべながら、ニナを褒めた。
「・・・それも知ってる・・・」
「ハハッ、てめぇ、うるせえよ!
よく頑張ったな」
「・・・・・た、・・・くれる・・・?」
「ああ――」
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――それからしばらくのことを、アレルは覚えていない。
気づけば、アンソニーの胸の中に顔を埋めていた。
そして、自分の顔は笑顔を作っていたように思う。
「・・・・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・あ、あの。アンソニーさん? もう自分なんですが」
「うぉ?! おぉ、すまん」
ずっと自分の身を離そうとしないアンソニーに、
声をかけるのに時間を要したのも、アレルの優しさだろうか。
「いやぁ、俺、お前さんのことをずっとおネェちゃんだと思ってたぜ。
がはは、ありがとうよ、14丁目3番地の兄さん!
兄さんが住んでてくれて、本当に助かったぜ」
すっかり空は白みがかっている。
もうすぐ朝だ。
「なんて言うんだこういうの、
困ってる俺たちの横から、サッと出てきてよぉ。
こう・・・こんがらがってるもんを全部、あっと言う間に繋いじまった。
ああ、わかった。
あんたは俺達の英雄――だな!」
ほんとは俺も英雄になりたかったんだけどよ、やっぱり向いて無かったんだろうな。
よーーーく分かったよ。
そう言って、アンソニーは笑った。
こうして笑っていると、アンソニーの目は緑色に見える。
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サブGM(ここあ)より:
続いた!
もうちょっと後日談のためのことを書きたいですが、
(フレーバー記念品についてなど)
それは寝落ちてなかったらということで。
無かったらアレルさんは好きに書いちゃってくださいませ。
あ、退魔の護符は流石に高そうなのとオリジナルなのとで、
アンソニーが神殿のお友達に返してきた、ということでお願いします(''*
一応流れをまとめますと、
アンソニーに呼び出されたニナ(自分の姿で行きたい)→憑依を中止、
小さい廃材の広場にて、スペクター姿で待つ。
アンソニーに現実をつきつけられて、思い出の場所に束縛されたファントム化をしそうに。
(スペクターは廃材を動かせないので......!)
それからアレルの一撃で、ファントム化を阻止。
スペクターニナに憑依をさせたアレルが願いを果たし、無事天に帰っていった。
(退魔の護符は使わずに返却)
というところでしょうか!
アレリーはおっさんに身を投げ出す勇者(''*