大団円
アレル=リリー
[2012/07/14 00:36]
目の前でニナさんとアンソニーさんが話している。
微笑ましい光景だ。
不意に、ニナさんから話しかけられた。
「・・・それは、何ででしょう?」
誰かに抱きしめられている感覚がする。
なんだろう、この懐かしい気持ち。
幼い頃、同じような体験をしたことがある気がする。
・・・・あぁ、分かった。
父に抱擁してもらったときと、同じ感覚なんだ。
暖かくて、安心する気持ち。
思わずニナさんが化けて出てしまったのも頷ける。
出来れば、もう少しこのまま暖かさを感じていたいな・・・・そんな事を思うけど、
でも・・・・やっぱり駄目ですね。これは、ニナさんに与えられた抱擁なんですから。
ニナさんだけが受け取れる、抱擁なのだから。
おずおずと口を開き、もう自分の中にニナさんは居ない事を伝える。
頬に暖かいものが伝っている。顔が先ほどまで笑顔だったような感覚がする。
・・・・ニナさんは、無事成仏できたようですね。
「む、失礼です。どこをどうみても男じゃないですか。
・・・・こちらこそ、貴方達から手紙をもらえてよかった。」
最初にちょっとむくれて・・・次の言葉は笑顔で。
チラリと空を見上げれば、もう夜が明けようとしていた。
「違いますよ。アンソニーさん。
英雄になるのに、向き不向きなんかないんです。
ただ、助けたいと思った人のために全力を尽くせるかどうか。
英雄になるための条件なんて、それだけだと・・・・自分は思ってます。」
だから、ジョディさんとお腹の中の子供を守ろうとした貴方もまた、英雄なんですよ。
そう言って、自分も笑った。
「・・・おおっと! そうだ兄さん」
別れ際に、アンソニーさんから呼び止められた。
微笑ましい光景だ。
「ありがとう、アレルさん・・・」
「あの・・・」
「あの・・・わたし」
不意に、ニナさんから話しかけられた。
「わたし・・・変だな・・・って、思ってたん、です」
「手紙の住所・・・"14丁目3番地"・・・変だな・・・って・・・」
「・・・それは、何ででしょう?」
「・・・覚えてた・・・」
「・・・ひゃくよんじゅうさん、こ」
「・・・わたしの家から・・・アンソニーの家まで・・・」
143枚の石畳。
「こんな住所にするの・・・アンソニーしかいないんじゃ、って・・・」
「・・・なるほど。我ながら・・・・良い・・・・住所です・・・。」
そこまで言って、自分の意識は急速に沈んでいった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
143枚の石畳。
「こんな住所にするの・・・アンソニーしかいないんじゃ、って・・・」
「・・・なるほど。我ながら・・・・良い・・・・住所です・・・。」
そこまで言って、自分の意識は急速に沈んでいった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
誰かに抱きしめられている感覚がする。
なんだろう、この懐かしい気持ち。
幼い頃、同じような体験をしたことがある気がする。
・・・・あぁ、分かった。
父に抱擁してもらったときと、同じ感覚なんだ。
暖かくて、安心する気持ち。
思わずニナさんが化けて出てしまったのも頷ける。
出来れば、もう少しこのまま暖かさを感じていたいな・・・・そんな事を思うけど、
でも・・・・やっぱり駄目ですね。これは、ニナさんに与えられた抱擁なんですから。
ニナさんだけが受け取れる、抱擁なのだから。
「・・・あ、あの。アンソニーさん? もう自分なんですが」
「うぉ?! おぉ、すまん」
おずおずと口を開き、もう自分の中にニナさんは居ない事を伝える。
頬に暖かいものが伝っている。顔が先ほどまで笑顔だったような感覚がする。
・・・・ニナさんは、無事成仏できたようですね。
「いやぁ、俺、お前さんのことをずっとおネェちゃんだと思ってたぜ。
がはは、ありがとうよ、14丁目3番地の兄さん!
兄さんが住んでてくれて、本当に助かったぜ」
「む、失礼です。どこをどうみても男じゃないですか。
・・・・こちらこそ、貴方達から手紙をもらえてよかった。」
最初にちょっとむくれて・・・次の言葉は笑顔で。
チラリと空を見上げれば、もう夜が明けようとしていた。
「なんて言うんだこういうの、
困ってる俺たちの横から、サッと出てきてよぉ。
こう・・・こんがらがってるもんを全部、あっと言う間に繋いじまった。
ああ、わかった。
あんたは俺達の英雄――だな!」
ほんとは俺も英雄になりたかったんだけどよ、やっぱり向いて無かったんだろうな。
よーーーく分かったよ。
そう言って、アンソニーさんは笑った。
今の彼の瞳は、綺麗な緑色に見える。
今の彼の瞳は、綺麗な緑色に見える。
英雄になるのに、向き不向きなんかないんです。
ただ、助けたいと思った人のために全力を尽くせるかどうか。
英雄になるための条件なんて、それだけだと・・・・自分は思ってます。」
だから、ジョディさんとお腹の中の子供を守ろうとした貴方もまた、英雄なんですよ。
そう言って、自分も笑った。
「・・・おおっと! そうだ兄さん」
別れ際に、アンソニーさんから呼び止められた。
「肉が食いたきゃいつでも来てくれよ。
タダってのは流石に厳しいが、兄さんには特別に安くするからよ!」
「おや、それは助かりますね。おいしい食べ物が安く手に入る。
これほど嬉しい事はありません。」
そして、手紙と一緒に届いたものがある。
銅製の板に"オラン14丁目3番地"と書かれたそれは、どうやらドアプレートのようだ。
一緒についてきた手紙を読んでみる。
「・・・ですって。まったく、無茶を言ってくれますね。」
顔をほころばせながらそう言って、ドアプレートを手に入り口のほうまで歩く。
そしてそれをぼろぼろの玄関扉に掛ければ、どことなく"人の家"という感じは出ただろうか。
「・・・良い贈り物をしてもらいました。」
そう呟きながら、家の中へ入っていく。
ゆったりとお茶を飲みながら、一息つく。
遠くで子供の喧嘩の声が聞こえるのも、
犬の鳴き声が聞こえるのも、全て平和な日常。
どんなところだって、住めば都になるのだ。
そんな事を思って―――
「あいたっ!」
―――いたら、積み上げていた本が崩れ落ちて、頭に当たった。
「ったたた・・・・あー・・・そうだった・・・・家の掃除をしないといけないんだった。
すっかり忘れてましたよ・・・・はぁぁぁぁ・・・・・
だれか、自分の掃除を手伝ってくれる"英雄"は居ないんですかねぇ・・・」
深く溜息をつきながら、空を仰いでそう言う。
すると、窓の外の景色が見えた。
「・・・まぁ、空もこんなに綺麗だし、頑張ってみようかな。」
そう言って、よっと立ち上がった。
オランは、今日も晴天だ。
PL
終わった!届かない宛先編、完!
というわけで、アレルートはこれにて終了としますー!
GM、SGM、及びPLの皆様、本当にお疲れ様でした!
感想等はまた別個であげるとして、とりあえずは事務的な部分!
経験点:500点
報酬:ドアプレート
確かにいただきましたー!
「おや、それは助かりますね。おいしい食べ物が安く手に入る。
これほど嬉しい事はありません。」
「それと、少し落ち着いたら礼を送らせてもらうぜ。
つっても、ウチにゃ金もねぇしそんな大したもんは無理だけどな」
「いえいえそんな、気持ちだけで十分ですよ。
・・・・でも、ふふ、少し期待して待っていましょうか。」
「えぇ、もちろんです。あとは誰宛かも書いておいてほしいですね。
―――アレル=リリー宛ってね。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれから、数日。
自分は特に何事もなく過ごしている。
変わったことといえば、一度だけ天候が崩れて家が雨漏りしてしまったことと、
いたずらの頻度が少なくなった・・・様な気がする事だろうか。
そんな自分の下に、2通の手紙が届く。
1通目はアンソニーさんからで、簡単な礼を述べたもの。
そして2通目は・・・・ニナさんからの手紙だ。
紙の端に血が滲んでいるところを見ると、どうやらあの時に書いたものらしい。
自分の手で書かれた、自分じゃないものからの手紙・・・・不思議な感覚だ。
「ふふ・・・でも、悪い気分じゃありません。」
「いえいえそんな、気持ちだけで十分ですよ。
・・・・でも、ふふ、少し期待して待っていましょうか。」
「宛先は、"14丁目3番地でいいんだろ?"」
「えぇ、もちろんです。あとは誰宛かも書いておいてほしいですね。
―――アレル=リリー宛ってね。」
あれから、数日。
自分は特に何事もなく過ごしている。
変わったことといえば、一度だけ天候が崩れて家が雨漏りしてしまったことと、
いたずらの頻度が少なくなった・・・様な気がする事だろうか。
そんな自分の下に、2通の手紙が届く。
1通目はアンソニーさんからで、簡単な礼を述べたもの。
そして2通目は・・・・ニナさんからの手紙だ。
紙の端に血が滲んでいるところを見ると、どうやらあの時に書いたものらしい。
自分の手で書かれた、自分じゃないものからの手紙・・・・不思議な感覚だ。
「ふふ・・・でも、悪い気分じゃありません。」
そして、手紙と一緒に届いたものがある。
銅製の板に"オラン14丁目3番地"と書かれたそれは、どうやらドアプレートのようだ。
一緒についてきた手紙を読んでみる。
"本当に人が住んでるのか、配達人も苦労したって聞いた、
オランにゃお前さんに手紙を届けたい人も沢山いるだろうよ、
あんたに救えるやつは沢山いるんだ、これからもよろしく頼むぜ"
「・・・ですって。まったく、無茶を言ってくれますね。」
顔をほころばせながらそう言って、ドアプレートを手に入り口のほうまで歩く。
そしてそれをぼろぼろの玄関扉に掛ければ、どことなく"人の家"という感じは出ただろうか。
「・・・良い贈り物をしてもらいました。」
そう呟きながら、家の中へ入っていく。
ゆったりとお茶を飲みながら、一息つく。
遠くで子供の喧嘩の声が聞こえるのも、
犬の鳴き声が聞こえるのも、全て平和な日常。
どんなところだって、住めば都になるのだ。
そんな事を思って―――
「あいたっ!」
―――いたら、積み上げていた本が崩れ落ちて、頭に当たった。
「ったたた・・・・あー・・・そうだった・・・・家の掃除をしないといけないんだった。
すっかり忘れてましたよ・・・・はぁぁぁぁ・・・・・
だれか、自分の掃除を手伝ってくれる"英雄"は居ないんですかねぇ・・・」
深く溜息をつきながら、空を仰いでそう言う。
すると、窓の外の景色が見えた。
「・・・まぁ、空もこんなに綺麗だし、頑張ってみようかな。」
そう言って、よっと立ち上がった。
オランは、今日も晴天だ。
PL
終わった!届かない宛先編、完!
というわけで、アレルートはこれにて終了としますー!
GM、SGM、及びPLの皆様、本当にお疲れ様でした!
感想等はまた別個であげるとして、とりあえずは事務的な部分!
経験点:500点
報酬:ドアプレート
確かにいただきましたー!