来訪者。
タリカ
[2012/08/08 15:28]
タリカがフラン様をなだめていると戸がノックされた。
まさかこんな人里離れた小屋に誰かが来るなんて想像していなかったから、驚くと同時に警戒を怠らない。
胸元のダガーはすぐに抜けるか?
雨の音はもうしない。
窓の向こうで光っていた雷も今は収まり、そこからは青い空が覗いていた。
警戒しつつ、そっと、戸を開けた。
「・・・あなたは・・・?」
「あ、あの。これを持ってきたんです。
フローさんに届けてください」
「・・・あなたは?・・・?」
今度はタリカが女性に声をかける。
近くの農家の人間だろうか。
どうやら物取りでは無さそうだ。
「この、家・・・。フロー・・・、?」
?
「たり か。・・・だ、れ?」
「フラン様。
なにか持ってきて下さったそうですよ。
お知り合いでは?」
奥にいるフラン様に声をかける。
フラン様なら彼女のことを知っているだろうか。
もう一度やってきた女性の方に振り返る。
「・・・思い出した。
わたし、思い出したわ・・・」
?
様子が...おかしい。
やってきた女性はタリカを押しのけて勢い良くフラン様に抱きついた。
「会いたかった・・・ 会いたかったわ。
わたしよ、ネロリよ」
「ジェリー。いつ帰ってきたの・・・?」
「マ マ」
「パパ。
・・・聞いて。
わたしたちの子は、あの子は――――。
高熱にやられて」
「マ マ」
「死んでしまったの」
「ま ま!」
「まま ぼくゎ ふぁん。ふらん」
「まあ、何を言っているのあなたったら。
あの子は、あの子はもう...」
「ま ま!」
彼女は泣いていた。
フラン様もまた泣いていた。
でもそれは違う涙だ。
ネロリ、ママ、ジェリー、あの子...というのはフラン様のことか。
いったい何がどうなっているのか、分からなかった。
でもこれだけは分かった。
彼女がフラン様の母君だということは。
そして彼女が、何故かフラン様が亡くなったと思っていることも。
フラン様を旦那様と思っていということも。
いったい何があったのだろうか。
半年前、いったい何があったのだろう。
それからしばらくネロリ様は泣きながらフラン様を抱きしめていた。
フラン様は自分が『パパ』では無く『フラン』ということを訴えていたが、
ネロリ様には通じることがなかった。
それがあまりにも哀しくて見ていられなかった。
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がるふぉ
しょうさんの文章に圧倒されて、筆がうまく進みません(^_^;)
取り敢えず『カースを解いて本当のフランに戻すこと』という方向で
ちょっとずつアップしたいと思いますー(分割になってしまってすみません)。