三日三晩。

タリカ [2012/08/16 11:52]

 それから二日経ってもフランの熱は下がらない。

 タオルを変え、水を飲ませ、薬草を煎じても、フランの様態は変わらなかった。

 ネロリも夜通しの看病で疲れたのか、椅子に座ったままフランの横で静かな寝息を立てている。

「ま ま。 たぅけて。 ま ま」

 フランは相変わらず荒い息で苦しんでいる。


 タリカは窓の向こうを見た。
 今日は雨が降りそうだった。


「あら、やだ、わたしったらいつの間にか寝ていたのね」

 ネロリが目を覚ましたようだ。
 『ジェリー』の額に触れて、変わらぬ熱にため息を漏らす。

「あの、タリカさん、色々とありがとうございます」

「いえ。ネロリ様もどうぞ少し休んで下さい。
 タリカは慣れておりますから大丈夫です」

 黙って首を振るネロリ。

「半年前に息子を亡くし、わたしにはもうこの人しか居ないんです。
 この人まで居なくなってしまったら、わたしは、わたしはもう...」

 そう言いながら『ジェリー』の頬に汗で張り付いた髪を整えてやる。

 外では雨が振り出していた。
 窓から入る空気が少しひんやりとしてきた。

 そして夜が訪れ、フランが熱を出してから三日目の朝を迎えた。