森の世界。

タリカ [2012/06/28 17:29]

確かダリルの家はあそこの赤い屋根の家だったはずだ。
今日も見られているのだろうか。
タリカはそう思うとわずかだけれど気恥ずかしくなった。

軽く頭を振ってその気持を振り払う。
そして再び前を見た。
目の前の坂道を。

手紙の地図を確認しながら緩やかな坂道を登ってゆく。
一度行った場所だったから間違えることは無いが、慎重に地図を確認しながら進んだ。


視線の先、坂の上の雲は、

空が――、

重い。

いや、これから重くなるのだ。
今はまだ雲の切れ間に青い空が透けて見えるけれど、ひと嵐来そうな風が吹いている。
嵐の匂いのする風が髪を踊らせる。



『ぼくも たかに さわりたい』

『あそびに きて』

地図を見ながら何度も手紙を読み返した。



やがて畑は見えなくなり森に入る。


森が―――、

深い。

アルト村の森とは違った雰囲気の森。
人里離れたこんな所に人が住んでいるのかと思えるほどみどりの濃い森。
これから行く先に何が待っているのだろうか。

「グレイ、先にお行き」

雑草や樹の葉が生い茂っている所ではグレイも枝にとらわれてしまう。
幸いフランの家の近くではグレイが降りて来れるだけのスペースもあった。
灰色の鷹が降りれなくなっては、ここに来た意味もなくなってしまう。


道無き道を進む。
ここを通るのは熊か狼か、果たして――人も通るのか。


草木を掻き分けて森の中を進む。
幸い獣道だ。
歩を進めるのは藪の中を進むよりかは難儀しない。

生い茂った様々な樹に囲われて、日の当たらない森の中は、ひんやりとした空気が流れていた。
外の空気とは違う。


その中で姿の見えない鳥達が囀んでいる。
その中をリス達が餌を探して枝を渡っている。
その中にずっと奥のほう、鹿達が水を飲んでいる。

あの小川はエストンの山々から流れているものだ。
その水も元を辿ればオランの南に広がる大きなうみのもの。
太陽の熱と空と雨を経由したもの。


左奥の方、狼が歩いている。
昼食に鹿を狙っているのだろうか。
オランの水を飲んでいる鹿を。

狼はタリカの存在を認めても逃げはしなかった。

タリカは狼の背を撫でる。
昔いた森では狼は友人だった。

毛並みは悪くない。
自然の連鎖が上手く行っている証だ。

存在―――根拠の連鎖。
それが自然というもの。
その存在がお互いに鑑賞して自然を構築している。

「お行き」

狼は森の中へ消えていった。


耳から入る森のおと、自然のおと。
空気が運ぶその情報だけで世界は広がった。
鳥は?リスは?鹿は?
そして、狼はどこから来てどこへ行くのか。
何を食べて、命を育んでいるのか。

生い茂る樹々の葉、一枚一枚をとっても、それぞれ色合いも葉脈も違う。
太陽は、水は、空気は、それらにどう関わっているのか。


その意味を考えるだけで、森が、

世界が―――、

思考の中で無限に、

――――広がってゆく。

その世界に呑み込まれそうになって、ひとつ大きく息を吐いた。
まとわりつく空気を振り払う。



不意に視界が開けた。
地図にある『ここ』。
おそらくフランの家。


ピィ――――――――――

静謐な森の中を響くように口笛の音が広がる。
やがてグレイがタリカの腕にとまろうと降りてくる。
灰色の鷹が連れてくる風はいつも心地よかった。


タリカは入り口をノックして人間の存在を確認した。
ここにフランがいる、はずだ。

「こんにちは、タリカと申します。
 フラン様に会いに参りました」

誰が、いや何が出てくるのだろうか。
タリカは手紙を片手にしばらく待った。

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PLより:

ノックしてもしもしって書くだけでいいのに長くなってしまいました(笑)

しょうさん凄い!\(^o^)/
GMの描写する世界に圧倒されています。
実体験しているかのような!
これだけで萌えております。

森は萌えているか――――――。
――――――ああ、もちろんだ。

しょうさんに追いつけるように頑張ってみましたが無理でした/(^o^)\
ど、どうでしょうか。。

他の人も書いていいのよ?(いえ、書いてくだsai.