冒険者たち

GM [2012/11/05 13:15]


レックスのある地域一帯に、強力な磁場がある。
街1つ分に近いくらいの範囲で。
便宜上それは磁場と呼ばれているが、厳密な性質は明らかにされていない。


その磁場の中心辺りに、ぼんやりと陽炎を放ったように、朽ちた尖塔を集めたような城の影が見える。


その城に実態はない。
蜃気楼のように浮かび上がり、揺れる。
目指そうと近づいても一向に距離が縮まらない。大きさが変わらない。
そして歩を進めても、いつの間にか蜃気楼のような映像は背後になり、その時既に足は磁場をくぐり抜けているのだ。


その幻影の城は、過去数多くの冒険者達が挑んでいった。
しかしその全貌は明かされることなく現在に至る。

文献を調べたことのあるものなら、この灰青に朽ちた姿の城についてこう書いてあることがわかるだろう。
著者はオランの魔術師ギルドに所属する、現在は中堅の研究者。
実際に、魔術師ギルドの調査隊としてかの遺跡を訪れた人物だ。


『あまりに強いマナに長年晒された地は、それ自体が意思を持った生物のようだ。

 その強力な磁場は、我々が手を加えたとしても、自浄作用があるかのように、たった数日で元通りになってしまう。
 その事実は、我々に大きな敗北感を与えた。
 なぜなら、古代の遺産であるその不思議な敷地を保存しようと、物理魔力両方の結界を張り巡らせることに多大な苦労を要したからだ。だのに、それがたった数日で"かき消されて"しまうとは。

 強力な磁場は、人の思い通りにものを運ばない。とある地点では右へ矢を飛ばせばそれは左へ吸い込まれ、上へ魔法を放てば正面に飛んでいく。我々は限られた時間・経費・人力を費やし、最低限のそれらの法則を見つけた。しかしあくまで最低限の、だ。

 この地の奥深くまで法則を理解するには、さらなる研究と調査が必要だろう。しかし誰も、大きな投資をするほどの価値を、この地において未だ見出だせていない。
 オランもラムリアースも、正体がわからないこの、偉大なる魔法王国の遺産を前に、手を出すことを躊躇っている。
 他にも数多くある実態を持った城の調査のほうが成功に近いことを、皆が知っているからだ』


と。


実情、この遺跡の横顔をなぞる作業は、名声を求める冒険者達に託されている。
すなわち、自らのリスクをかけて遺跡を調査し、相応の研究機関に結果を提出する。そうすれば報酬と栄誉が冒険者達に贈られる。
この時代が作った仕組みだ。


しかし、かつては"幻城"とも呼ばれていたこの蜃気楼の城は今、冒険者たちの間では"死城"と呼ばれている。
―――亡骸、存在しない、無価値な―――といった意味を込めの"死城"。


あの城は、目指しても目指しても近づかない。
誰もに見放されかけた場所となっていた。


     ---------------


「俺を、連れて行ってくれ。
 俺は君らを途中まで案内できる。見つけたんだ。
 ・・・連れて、行くんだ」


左手のない男がそう言う。
強い懇願はまるで条件にも聞こえる。
しかし、この高圧的な態度はある種哀れみを含んだ必死さをも感じさせた。


「俺たち・・・そう、俺たちは5人の冒険者だった。
 死の城へ向かおうと言い出したのは、ミデル。奔放さが取り柄の魔術師だった。

 彼女、ミデルは考えたらしい。
 『城には自浄作用・・・保存性がある。逆に考えれば、これは古代のままから変わってはいないんじゃないかな。この城は"死城"なんかじゃない。きっとお宝があるに違いない』ってさ。

 それで俺たちは向かったんだ。腕に自信もあった。・・・だが・・・。

 仲間4人が、命を落とした。
 城の、あの"城の壁"に触れることもできずに!!
 クソッ!・・・クソッタレ・・・!畜生!

 あの城は、幻なんだ、やっぱり!
 俺たちはバカを見た。・・・・・・。

 ・・・すまない。
 正直に言おう。
 俺は、仲間を、・・・回収したい。あいつらの、体を・・・。

 頼む、誰か一緒に行ってくれ。
 案内はする。

 ・・・俺は、レンバートという。シーフギルドに所属している」


そうして男はあたりを見回し、ジョージの顔を見て止まった。


ジョージはレンバートに言った。


「依頼だな?」


レンバートはジョージに返す。


「そうだ。・・・だが、前金はない・・・。
 ・・・・・・。」


「報酬は?」


「情報だ。
 俺たちが見つけた"死城"に隠された謎と、その解き方。これは誰にも言ってない。
 どこぞに報告すれば、それなりの金になるさ」


「ふん、信じがたいな」


「ギルドに尋ねてみるがいい。奴らは知らない」


「両方だ。
 お前が漏らしていないということと、もう一つ。
 お前が本当に"死城"の謎を見つけたかどうかだ」


「・・・これを見てくれ」


レンバートは、上半身の服を脱いだ。
左腕の、丁度肘から下がない。


その断面は一見して、白く凍りついているようだった。
レンバートはその断面を指で叩く。


「これは氷じゃない」


魔晶石を細かく砕いたかのような結晶が張り付いている。
レンバートは続けた。


「依頼を達成してくれたのち、学院への報告の際には、
 ・・・俺をも、差し出すといい」


むしろそうしてくれ、と男は呟いた。


ジョージが口を開いた。


「その依頼、うちの店で引き受けた。

 ・・・というわけでお前ら。

 奥の部屋へ行け」


ジョージはその場にいた冒険者全員に向かって言った。


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...GMより:

それでは開始です!
皆様、よろしくお願いしますー!


ゴタクを並べましたが、城についての情報は簡潔には以下のとおりです。

 ・蜃気楼のようにゆらゆらと透けて見え、また近づけないため、実体を持たないのではないかと囁かれている。
 ・城のリアルな存在の有無は、文献には明記されていない。
 ・城の見える場所には街1つ分ほどの磁場がある。
 ・その磁場は、通常の物理的な法則をやや逸脱させることがある。
 ・磁場の持つ法則は、地域ごとに違うよう。
 ・磁場に何か変更を与えようとしても、不思議な力によって数日で元通りになってしまう。
  例:看板挿したら消えていた/地面に"I LOVE 花子"と深く刻んでも復元されていた/瓦礫に風鈴をぶら下げてもどっかに消えた などなどです


そして現在の依頼の内容はこちらです。
 ・レンバートの仲間4人の遺体を回収する


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※お願い:買い物と出発について※
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出発時、着ていく防具の確定をお願いします。それ以外の防具は持っていけないとします。
武器はいくつでもOKです。

出発の宣言が揃いましたら、ストーリー上PCたちはパダへ移動して死城へ向かいますが、進行の関係上、直接死城へ向かいます。パダのシーンは挟まないため、買い物や準備は全てこのカテゴリで行なっておいて下さい

ちなみに、死城までの移動中、持ち物や所持金が減るようなことはありません。
フレーバーなどで任意に減らすことは可能です。