我、花を愛す

プレナ [2013/01/02 22:01]

 智恵の神獣が創世神話の一節を復唱する。
 石碑が変化し、光輪が辺りを覆う。
 それに合わせて幻影がかき消されるように、あるいは文字通りなのだろう、辺りの風景が変化する。
 幻影がこの施設を隠匿、保護するものであると仮定するなら、この結果はわたしたちの答えが的を射ていたという証だろう。
 そして足元に光が投げかけられていることに気が付いた瞬間、わたしたちは奇妙な浮揚感に襲われる。何度か体験したことのある転送時の違和感だ。


☆☆☆


 光が薄れ、視覚が周囲の状況を確認する。
 どうやら辺りは暗い......ようだ。
 残光が薄れていくにつれてそれは確信へと変わる。
 音の響き具合、空気の流れからどうやら狭いところにいるらしい。
 耳を澄ませて警戒をしながら、明かりを確保しようと考える。
 突然、軽い目の痛みと共に視界が広がる。細めた目で袖越しに様子をうかがうと、レンバートさんが光明の魔法がかかった短剣を抜いたことがわかった。

「明かり、ありがとうございます」

 短剣を抜いたレンバートさんと、魔法を仕込んでくれたレイフィアさんに一礼する。
 こういう周到さは、これから見習うべきと改めて心に留める。
 辺りを見渡すと、重厚な石造りの構造が見て取れた。ここが始原の巨人の神殿なのだろうか......?
 

 この神殿で祭られている始原の巨人から、この世界は生まれた。
 この神殿が変化を拒むのは、信者たちが始原の巨人に永遠と不朽を求めたからだろう。
 しかし、変化のない永遠が幸せなのだろうか?幸せであれば巨人が孤独の末に死ぬことはなかったのではないのか?
  もし時間を止められたならそれが永遠だろうか?それとも同じ状態を廻り続けれたら永遠だろうか?
 始原の巨人の存在に敬意を表しつつも、この神殿のありように疑問を持つ。
 わたしたちの一生は花と同じだ。有限の時の中で咲き、そして散っていく。だからこそ美しく、貴重と思えるのだと思う。

 少しの間、自らの考えに気を取られていると、見覚えのある人影が姿を現す。
 わたしはそれをふたつの意味で知っている。姿はガラフさん、そしてその正体は......。

>「さあ、其処を動くのではないぞ。さすれば平和的に見送ろう」
>「そうじゃ、じっと待つのじゃ」

 ガラフさんの姿をしたダブラブルグは、非友好的な態度ではありながら、わたしたちを無事に帰還させる旨を告げる。
 その言葉におそらくは偽りはないだろう。始末するつもりなら、熟知した施設の中で有無を言わさずに襲撃すれば事足りるからだ。

 動き出す仕掛けの中で、その流れに沿って帰還......その最中に心の迷宮の壁を壊すかのように、短剣を手に取り、地に向かって振りかぶり、刻む。
 爪跡でかまわない、ここに来た証にこの床を引っ掻いて、爪跡を残して行く!
 思わず心中でそう叫ぶ。数日後には痕跡も残さず消失する、この施設の掟に抗う意志を込める。
 理想の望みは決して与えられないと解っているこの世の中で、足掻く。


     -我、花を愛す。その気高さと、儚きさだめが故に-


 共通語で刻んだこの一文が、いつまで存在できるかはわからない。
 おそらくは誰かの目に留まる前に消えてしまうだろう。
 ある意味人生の縮図だ。誰の目にも留まらずに消えていく宿命......。
 それでもわたしは信じている。為したことが他の人の心に残る可能性、そしてわずかでも受け継がれてより良い未来を創りだすことを。
 それは智を積み重ねることと極めて近いのではないか。


☆☆☆


 わたしたちは、無事に元の場所へと戻ることができた。
 わたしの最後にやった反抗、あるいは悪戯は大目に見てもらえたようだ。
 乾いた冷たい風が身体を撫で、地上であることを全身で感じさせてくれる。

>「・・・・やれやれ、本当に幻のような・・・・でも、そこにある・・・・と」

「哲学的ですね。今回のことはまさにその通りでしたけど」

 返事になっていない返事をレイフィアさんに返す。
 わたしよりも知に優れる彼女は、きっとわたしよりも思うところが多かったのだろうか。それとも答えを見出していたのか。わたしは敢えて問わないことにした。

>「今夜はベッドで眠ろう」

「おいしい食事と温かいベッドくらいは現実であって欲しいですね」

 レンバートさんの言葉に同意しつつそう応え、家路を急ぐ。
 依頼は果たしたし、賢者の学院に報告する資料のある程度そろえることができた。
 そして何よりも、皆が生きて還ることができた。
 きっと次につながることだろう。


――PLより――
 小賢しいことすみません。
 地面に「I Love 花子」に類することが彫りたかっただけなのです。
 とはいえ、変化を拒むこの施設の状況を疑問に思い、有限の時の中を自分らしく生きるということが良いことということを言いたかったりはします。

 オブシディアンドッグの知名度判定ですが、可能であればインスピレーションの適用をお願いできればと思います。Okもらいました。感謝です。

 さて分配ですが、相談所に挙げたとおり4点の魔晶石をいただければと思います。

 皆さまお疲れ様でした。
 そしてGMのしょうさん、運営ありがとうございます。色々なギミックで楽しませようとしたお心遣いが身にしみました。
 お待たせしたりご迷惑かけたりすることが多くてすみませんでした。
 どうかまたよろしくお願いします。

追伸
 なお 「I Love 花子」は、記事「依頼」の「GMより」の下記の例文にインスパイアされてリスペクトしてオマー(ry な感じやっちゃいました。ご不快や奇異を感じられたらすみません。

> ・磁場に何か変更を与えようとしても、不思議な力によって数日で元通りになってしまう。

>例:看板挿したら消えていた/地面に"I LOVE 花子"と深く刻んでも復元されていた/瓦礫に風鈴をぶら下げてもどっかに消えた などなどです


まう@プレナ : 2D6 → 2 + 1 = 3 (01/02-21:23:33)
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まう@プレナ : 2D6 → 4 + 4 = 8 (01/02-21:23:32)
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まう@プレナ : 予備ダイス3つ 2D6 → 2 + 4 = 6 (01/02-21:23:32)
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まう@プレナ : オブシディアンドッグ知名度判定 2D6 → 4 + 1 + (6) = 11 (01/02-21:23:20)
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System : まう@プレナさんが入室しました。 (01/02-21:21:56)