双璧の魔神

ルーイ [2013/06/06 11:19]
「まだ痛むけど、大丈夫。ルーイ、心配かけたね。
 ミユ、レイフィア、有り難うね」
 
「癒しの奇跡は本当にすごいよ。
 魔術がどうしても及ばないところだよね」
 
ベティさんの手を引っ張って起こそうとして。
 
 
   「ギャー」
 
 
やっぱり転んだ。
 
 
 
* * *
 
 

「人それぞれ、だからね。
 その代わり、あんたには図抜けた頭脳と魔法の才がある。
 それでいいじゃないか、世の中の全ての男が筋骨隆々でなきゃいけない
 決まりもないしね」

 
「あはは、もちろん。
 そう割り切ってます。
 どうしても羨ましいとは思うんだけど、その辺がまだまだってことなんだろうなあ」
 
ベティさんの慰め?に返事。
実際、剣なんてどうでもいいって心から思ってる人は、『割り切る』ことすらしないんだ。
オレもその域になるのか、それとも、心の内でコンプレックスを抱えたまま行くのか。
どうだろうなぁ。
 
「がさつで大雑把なひとが手先の仕事をできるわけないじゃないですか。
 気合いを入れる先が違うだけですよ」
 
実際、がさつな盗賊なんてのは、追剥とかしか出来ないわけで。
遺跡探索が主な時点で、細やかな神経を持っていなきゃ生き残れないもんな。
 
 
* * *
 
 
『証ハアルヨウダナ』
 
 「!! グルネル・・・」
 
ぎゅっと筋肉が強張るのが分かった。
前の仕事で対峙したばかりの、魔神。
ミユが持つ盾に視線を送る。
アレがなかったら、通れなかったわけだ。
あの時はファイアボールは使われなかったけど、炎の熱さが頬にフラッシュバックする。
まだ火傷は完全に治っていない。
治らない。
 
『―――うん、証があるから、通らせてもらうよ』
 
 
2体の間を通り抜けるまで、まったく緊張は抜けなかった。
いつ、襲われるかと。
 
 
『キミたちは、いつまでここにいるの?
 下のガルーシュと面識はある?
 契約が切れたら、異界に還れるのかな』
 
答えは期待していないけど、通り過ぎざまに、聞いてみた。
魔神の表情は分からない。
いつでも邪悪なことを考えているように見えるけど、彼らの精神構造は、オレたちとは違うらしい。
善悪の概念だってきっと違う。
命に対する考えだって、きっと違うんだろう。
でもそれは、人間同士だって、そうだ。
 
 
 
 
階段を、登る。