お宝は早い者勝ち。それが冒険者の流儀

オート・メララ [2013/06/15 12:20]
>「...始めまして、スワローテイルの皆さん。
> 私はレイフィア=ハイウィンド。
> 迂闊な動きは死に繋がりますから、自重なさいな」


「やっぱりそういう所か。
 ご忠告、痛み入る」


エレアノールと同じ槍使いかと思ったが、あの指輪...
もしかしたら魔術師なのだろうか。学院で会ったことは、多分ないと思うのだが。

どちらにせよ、こういう時の私がすることは決まっている。
部屋に貼ってある妖精の剣士の格言を思い出し、心に刻み直すのだ。


『無謀なことしたらお仕置きだから!』


暴走はイカンぞ、オート・メララ...深呼吸を一つ。




>「皆様方も、ここの玉座の主人の試練を受けたのですか?」


「気づかぬ内に、そうなっていたのかもしれん。
 何者かの意図は感じていたが、まさかこんな大げさなことになるとは」


ルーイ君等の一行も、随分と消耗しているようだ。
きっと遺跡の主を楽しませるための、厳しい試練にぶつかったのだろう。

ともあれ、玉座に向かい直す。
謁見のお時間といこうじゃないか。


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>『お初にお目に掛かる。余が、この塔の主だ。
> とは言っても、普段は別の場所に居るがな...』
>衣類は優雅な長衣だ。古代魔法王国の様式に則っている。
>色は紫、最も階位が高い者を示す色だ。


「紫衣...」


ルミナスの姫のような、霊体となって時代を超えた古代人の類かとの私の予想は、
より重篤な形で裏切られた。地方領の公女様どころの騒ぎではないぞ、これは。


「ウード、これはまさか」


やめてくれ、悪い冗談だ。
私はまだやり残したことが山ほどあるのに!


.
.
.


とはいえ、『御方』は戯れに我らを消し炭に...などとは思わなかったようで。
遺跡の来歴や、『御方』の人生(と言っていいものか)の楽しみなどを聞かされる。

会話の内容は人間の私からしても分かりやすく、明白だ。かなり人間性が残っている...
傍らの猫の王や悪しき知識の魔獣が、それを保つ手助けになってきたのだろう。
そういう意味ではルミナスの姫と、それほど大きな変わりはないのかもしれない。
ただ、その力が圧倒的に違うだけで...

とはいえ、人間性が残っているというのは良い事ばかりではない。
人間は皆、欲しがり屋だ。
人間らしさを持つ不死者の王が、興味深い下々の者を見つけたなら
それは...


>どうじゃ、我が配下にならんか?』


「エル」


反射的にエレアノールの手を握る。


>『特にルーイの知略とエレアノールの武勇は傑出している!
> 望むならば、余は永遠の生命を与える事が出来る。
> 最高級の魔法具も、魔術の研究室も与えよう。
> どうじゃ、余と共に永遠の時を歩まぬか?』


手が汗ばむのも、握りしめた手に力が入っていくのも自覚できた。
手を握る、という行為自体が、仲間を信じきれていない事の証であるとも。

だが私はエレアノールの小さな手を離せない。
むしろもっと力を込める。
離すものか。
誰にも、渡すものか。


「『御方』...この娘は生者に産まれてまだ年浅く、闇の力の深さも計りきれぬ身です。
 お誘いは光栄なれど、どうか娘が自ずから望む日まで、御召は猶予されたく」


ある意味、これも暴走なのだろうか。
私は自分の返事よりも先にエレアノールの事を『御方』に話してしまう。
こういう人物は話の横槍を嫌うだろうとは思ったが、我慢できなかった。


「『御方』の永遠の生からすれば、娘が答えを出すまでの生涯など、ほんのひと時のはず。
 どうか、今度(こんたび)は平にご容赦を...」


エレアノールを我慢するかわりに自分を...と言おうかとも思ったが、それはやめておく。
人の魂に価値があったとして、私のソレにはエレアノールの半分の値打ちすらあるかどうか分からない。
到底、取引にはならないだろう。

それになにより、エルの居ない永遠の生など怖気が走る。
自分が吸血鬼になってエルを眷属にするなんてのも却下だ。
私が好きなエルは、暗い遺跡の奥深くで物憂げに人間の戦いを眺めたりはしない。
初夏の太陽のもと、連れ立つ三羽だからこそのスワローテイルなのだ。


「我ら『燕の尾』、武も芸も売りますが、
 生者としての魂を売る事は致しかねます。『御方』...」


第一、王よ。
この娘は私が先に見つけた『お宝』なんだ。
今頃のこのこ現れて、誰が渡すものかよ。


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-PLスキュラ-

自分の分の返事だけしてればいいのに、他人の分やらパーティーの分まで喋ってしまったのでした。
だが後悔はしてない(キリッ
もしウードとエレアが行きたい場合は、オートを倒してから行ってもらいましょう!