片翼となろう。彼女を空に届けるために。

オート・メララ [2013/06/19 21:59]
オランへの帰路。

ひょんな事から一緒に帰ることになったルーイ君達と、
お互いの冒険の話をしながら歩く。
特に夜は盛り上がった。
人間は焚き火を前にすると饒舌になるものだ。


>「―――でね、魔法を使っちゃいけない部屋に入っちゃったんだよ。
> スケルトン・ウォリアーとストーンサーバント、それにボーンサーバント。
> 危なかったんだよ、ベティさんもレイフィア先輩も倒れちゃってさ。
> オレ?ああ、オレはあはははは」


「なんの、君も戦ったんだろう?
 私も大概だが、君もその体でよくやるよ。ハハハ」


私はこれまで街や学院にいるルーイ君しか見たことがなかったが、
なかなかどうして。仕事中の彼は食えない人物だなと感じる。
『御方』の誘いに、唯一、はっきりとした拒絶を示さなかったルーイ君だ。
ああ見えて、彼は灰色の男なのかもしれない。


「しかし、あの遺跡があれっきりというのが残念だ。
 まだ見てない部屋もあったのに...そちらはすべての部屋を改めたかね?」


古来、冒険者とは墓荒しから始まったという。
私もその端くれとして、調べ逃した玄室に未練が隠せない。
『御方』め、自分の判断だけで勝手に冒険を終わらせてくれおって。


「まぁ、一度は踏破できた遺跡だ。
 また地図が見つかったら一緒に行こうじゃないか」


もちろん明日をも知れぬ身上の冒険者。
たまたま地図が見つかった時、今日の面子が揃っているとは限らない。

ただ、それでも。

どうせ分からぬ未来なら、いいように考えておこうと。
そう思ったのだった。


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「ウード。
 二つ、話がある」


語り終え、夕食も済ませ、皆が三々五々、
寝床や見張りに離れていったあたりで、我が相棒を呼び止める。
エレアノールは...もう寝たかな?


「一つは私の事だ。
 『御方』の誘いの時、出しゃばったな。
 すまん」

「エレアノールを取られちまうんじゃないかと思って、な...
 それでつい喋りすぎたよ」


あの時の私は自分一人で三人分の答えを出そうとしていた。
だがそんな必要はなかった。本当に重要なのはそこではなかった。
私はただ、『行かない』と。そして『行くな』と、はっきり示せばよかったのだ。



「この前の事もあって、今回は最後まで冷静でいようと思ったんだが...
 やっぱり最後まで持たなかった。お前が一緒でよかったよ」


優男風のウードだが、その内面は深く、硬い。
一見が柔らかそうに見えるので、飛び込んで痛い目にあったこともあるが、
今はその大きな岩のような精神が、茹だった私から熱を奪ってくれるようで心地よい。

スワローテイルがこの一年これといった損失もなく過ごしてこれたのは、
エレアノールの槍と並んで、ウードの揺るがぬ心によるところも大きいのだ。


「次も勝とうぜ」


私の望みは二つ。
エレアノールを幸せにすることと、ウードに『やるな』と認められる事だ。
ライバルに認められたいと、男なら誰でも思わないか?


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そうして、色々と話した後。
我々はオランの街へと無事帰り付き、遺跡の調査結果を携えて
賢者の学院を訪れていた。


> その代わり、今回の探索行について詳細な報告書を提出する事。
> オデロ君も手伝うように。

>「...あ、有難うございますっ!」
>「やりました、やりましたよ皆さん!」


「ははっ、やったなヘリオン君!
 私で良ければなんでも手伝うぞ」


魔術師は何かを生産する職業ではない。
神々の力を真似た古代語魔術の可能性はまさに無限であるが、人の貧弱な精神では、
その力を完全に活かすことは出来ないのだ。魔術の奥義を極めたとて、腹も減れば眠くもなる...
『魔力の塔』が存在したほんの一時を除いて、魔術師は常に誰かに養われる存在だった。

それだけに、自分の研究成果が誰かに認められるということは嬉しいものだ。
自分のしてきた事は無駄ではなかった、自分は人の期待に応える事ができる。
その証明になるからだ。

おめでとうヘリオン。
同じ魔術師として祝福しよう。


「それにしても、こうして皆が無事に帰ってこれたのは戦乙女の加護によるのかもな。
 というのもな、エレアノール。ヘリオン君がお前のことを、まるでヴァルキリーだと...」


スワローテイルが形をなす前、我らの最初の冒険で、
我々は古代の魔法装置に呼び出された戦乙女を目にすることがあった。
あの姿を覚えているか、エレアノール?
精霊の乙女に例えられるなんて、それは女戦士に対する最大級の賛辞なんだぞ。


「要するに、強くて綺麗で可愛いって言われたんだよ。
 そんなことを言われて、お前はどう思うんだ?
 エレアノール」


ちょっとしたヤッカミも込めて、ヘリオン君の淡い好意を暴露してしまう私であった。
ソレは私の宝なんだ。
欲しかったら、私という守護者を倒してみせるんだな!


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-PLスキュラ-

・報酬
 愛玩従者の触媒1個(200)+ 1380ガメル

・経験点
 ○Aルート:基本1364点+PT経験点100点


以上、受領いたします。
感想等は後ほど!


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「それで、二つ目なんだが」


熾き火がうっすらとだけ明かりを灯す夜。
まだもう一つ、話したい事がある。
今度はウード、お前の事だ。


「お前、あのとき一人で戦おうとか考えてなかったか?」


言葉を交わさずとも何となく分かりあえる人間が、私には三人いる。
実家の兄とお袋、そしてウードだ...どうでもいいが妹のブレダと
我らがリーダーの事だけは、未だによく分からない。

だがあの時、不死王の前に立ったときのウードは、
何を考えているのか分からなかった。今まで見たことのない目をしていた。

あれからずっと考えて、ようやく推測がついた。
あの時ウードが考えていたこと。それは...


「お前は誰を相手にしてもその態度で通してるが、
 あの不死王の時は必死な顔をしていた。
 ...私は鈍いからな。いままで分からなかったんだが」

「お前がどういう作戦で不死王を出し抜こうとしてたかは知らん。
 お前が私よりずっと頭がいいってのは、この一年で嫌ってほど分からされたしな。
 お前がそれでやる気になったのなら、そこには勝算があったんだろう」


ウードが一体、なにを勝利条件に設定したのか。
不死王を倒すなど非現実的な目標を掲げるこの男ではない。
それになにより、あのときのウードの目だ...きっとあの時ウードが掲げた『勝利』とは、
ウードが普段、安易な使用を嫌ってきた、自己犠牲を伴う作戦だったのだろうと私は思うのだ。
それだけヤバい局面だったのだろう。
エレアノールのことで頭が沸騰していた私は、半ば気づかずに居たのだが...


「だがな、ウード」

「お前の作戦がどんなものだったとしても、
 それで生き残るのが私とエレアノールっていうなら、
 そんな作戦に私は乗れん」

「二人でエルを守るんだろう。
 違うか?」

「生きるにしても、死ぬにしても、私はお前と一緒に戦いたい。
 私はずっとそのつもりで、お前と組んでるんだよ」


.
.
.


「なあに、エレアノールなら上手くやるさ。
 あいつは見た目よりずっと大人だ。生き延びれば、きっと本物の勇者になる。
 敵さんだって、速いのと遅いのが同時に来たほうがやりづらいだろうしな」


「なるべく三人で生き残ろう。
 できれば皆で、笑って帰ろう。
 ...それでも、どうしてもダメな時は」


「ウード。
 地獄に落ちるときは道連れだ」


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-蛇足のスキュラ-

地の文が減っていくのは細かい説明をするのが恥ずかしかったからですギャー!
赤い人は寝ててもいいし感づいても良い|д゚)チラッ