学に励む
GM
[2013/06/21 03:59]
ヘリオンはガラフから放たれた瓶を慌てたように両手で受けとると、
礼と歌に期待する言葉を述べ、祭壇近くの椅子に腰を下ろした。
"ロンウェーの森深く、不死の魔物に呪われし沼有りき沼の主は【南瓜頭】、討てども討てども滅ぶを知らず生命の或るは逃げ惑い、悲鳴が闇に木霊する―――"・・・"だが、丘の上の愚者は沈む太陽を眺めながら大きく開いた心の瞳で回る世界を見つめている―――"
歌が終わり、ヘリオンは手を上げて拍手する。
「さすがのご経験からくる詩曲には、迫力と説得力を感じました。
僕は今・・・至極の思いです」
そう言い一呼吸の余韻のあと、ゆっくりと瓶に口をつけた。
---------------
>「至高神の信徒に伝わる終末神話、とな...?」
「はい・・・」
ガラフはヘリオンがいう"終末神話"について、思い当たることがある。
至高神ファリスの神殿には、ひとつの終末神話が伝えられていた。
それは、終末の巨人の誕生により、世界は滅亡するというものであった。
世界は始原の巨人の死によって始まり、終末の巨人の誕生を以って終焉するという。
終末の巨人は始原の巨人の生まれ変わりであり、この終末の巨人が新たなる始原の巨人として、次の世界の誕生まで永劫の時間を生きつづけるというのだ。
>「何か事情があったのだろう、ヘリオンよ」
>「お前が思い悩む事について、少しかも知れぬが協力出来るかも知れん。> じゃから、順を追って説明してくれんか?」
「ありがとうございます。
では・・・取り留めもないことかもしれませんが・・・。
ガラフ神官も御存知の通り、僕は古代魔術の師に育てられ、縁深くあります」
ラーダに仕える者の中には魔術を学ぶ者も多い。
または、魔術を学ぶ者にラーダの声がよく届くのかもしれないが。
「その終末神話がたとえ今となっては不要の知識だとしても、
古代語に繋がる知識である限り、僕は真剣に学びたいと思ったのです。
知識は歴史の中にある・・・そういう、ラーダの信徒としても。
調べました。すると疑問にあたり、ひらめきが浮かび上がってしまったのです」
「その終末伝説は古代において、ファリス信徒の間に広がった・・・。
ファリス神が説かれるのは法です。法は秩序・・・それは流れるように連続した根拠のことではないでしょうか。
根拠なき"噂"を、ファリスの信徒は受け入れるでしょうか・・・?
それは古代だったからという"時代のせい"だとは僕には思えません。
世界はいつか滅びる。そのような人の志気を削ぐ伝えが広まらないことはわかります。
だとしても、ファリス信徒以外にそれを知った者達は、どういう態度を示したのでしょう?
僕は、もし実際その伝えを聞いたとき嘲るようなことはしないでしょう。
むしろ終末神話は、ファリス神が受けた、運命からの神託のような気がするのです。
記録――歴史の神でもあるラーダは、どうお考えになられたのか。
そしてその時代、ラーダの信徒はどういう意識の流れの中にいたのか」
「真理を追い求めるラーダの信徒が、"終末神話"について深く考えず軽んじていたとは思いたくないのです。・・・これはきっと、僕のエゴイズムでそう感じるのでしょうが・・・」
自分のローブの胸元を掴んで語っていたヘリオンだが、一呼吸置いたあとゆっくりと手を下ろしてガラフを見た。
「ガラフ神官。
いつかたくさんの冒険の中で、僕の疑問に当てはまるような事柄を発見した時、是非、お教え下さいますか」
その顔はとても澄んでいて、表情はなかった。
―――――――――――――――――――――――――――
GMより:
本文中の終末神話につきましては、ワールドガイドp.17の記述をまるっと写しました!
もんもんと濃ゆいお話しを繰り広げるヘリオンくんです。
具体的な話というよりまるで、お悩み相談のような形です。
☆ひき続きこちらへの返信は『ラーダ神殿』にのみチェックをいれてください