先の相談
「そっか」
フィルが持ってたのは、大事なメイジスタッフだったらしい。
「うん、気持ちは分かるよ。
オレもさ、壊されちゃった、って言ったでしょ。
あれ、かあさんから受け継いだ杖だったんだよね」
ほんのちょっとの時間と引き換えに、それは無くなっちゃった。
「ま、それはしょーがないんだ。
オレが不用意だったせいだから。
今使ってるのは、オレが自分で稼いだやつ。
新しいのもいいもんだよ」
銀の棒杖を出す。
キレイなんだよね。
工学実験棟に送られたって言ってたよな。
出来れば取り返してあげたいけど、あくまでも、二の次だ。
* * *
寝る前。
見張りはヘリオンたちがやってくれるみたい。
助かるなあ。
「鍵はゴーレムに」
JJが聞いたっていう、言葉。
「そのはげ頭が、セルマってひとの相棒なのかな。
話し相手は長身の女のひとでした?」
ふーむ。
「先に進む鍵を手に入れて、でも地図は売って。
まだここには再び来てない?
手に余る障害があったから引き返した、って考えるのが妥当かなあ」
ぺらりと地図を出す。
「それぞれの寮に近い階段が、それぞれの棟に対応してるとして」
ぴっと一番左の階段に指を置く。
「生命実験棟、なのかな。
寮にストーカーの研究材料が転がってた。
ストーカーがいる前提で動いた方がいいし、他にロクでもない魔獣とかがいるかもね」
真ん中。
「魔法実験棟。
第一シェルターとかいうところで事故があった。
その事故の原因がうろうろしてる可能性があるね。
蛮族を使って実験したって書いてあったし、・・・日記の女の子の成れの果てが、いるかもしれない」
眉間にしわが寄った。
人体実験が必要悪なのは分かるけど、好きにはなれない。
最後、一番左。
「工学実験棟。
入室時にパーフェクトキャンセレーションがかかるって書いてあった。
魔力の強さや、まだ機能が生きてるかにもよるけど、魔法の道具がガラクタになる可能性が高い。
ヘリオンたちの装備が送られたって言ってたね」
アレル、ガラフさん、ダンテさんに顔を向けた。
「セルマってひとが見つけたのは、魔法実験棟の鍵かもしれないね。
で、シェルターの鍵を開けたら、手に負えない怪物が待っていた。
だから、渋々引き返した―――っていうのが、オレの予想」
シェルターの鍵を再び閉めて、後続が入れないようにしてから地図を売り、金を作って魔物に対する戦力を整えて、再挑戦。
っていうひとたちならいいな。
地図に記録を残してないのが、悪意からじゃないといいんだけど。
「というわけで、どうしようか。
工学実験棟は鍵があるし、パーフェクトキャンセレーションはとりあえずマジックアイテムを置いておけば対応できる。
あの小人――シーって言ったっけ、アレを使って装備の移動をしたんだろうから、問答無用で襲われるようなことはなさそう。
生命実験棟も鍵があって、ストーカーを警戒する必要があるけど、いるって分かってれば対処のしようもあるよね。
魔法実験棟は鍵がない。そもそも開けられないかもしれないけど、大昔危ない事故があったことは分かってる」
こうやって並べてみると、どこも大して変わらないかもしれない。
そうすると、もしかしたら、明確な目的がある分、工学実験棟が良いかもしれないなあ。
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PLより:
次どこに行きましょうかー、というご相談。
S2でいいかなーと思ってましたが、改めて情報を並べてみると、どこも楽しそうです(笑
とりあえず、S2行ってみます?